八月納涼歌舞伎・第一部(初回)



◆二十日 三階3列46番


今回は写真ナシ(苦笑)。何せ先日(当日)ちょいと書いた日記にもありましたように、母親と一緒でしたので。そちらに気を遣うので一杯一杯でしたものですから(汗)。


そしてそして、またも数時間後には歌舞伎座へ、という状況…。何故ギリギリにならないと書けないのだ自分(泣)。
見事に一週間経ってしまっているので、細かいことはもうすっかり忘れている上に、またもとてつもない眠気に襲われておりますのでさらりと<と書いてさらりと終わった試しは一度も無い。

祇園祭礼信仰記』



腐っててすみません(泣)。
いやこれは別に戴いたコメントに対してとかいう意味では決してありませんので。先日もちょっと書きましたが、やはり折角歌舞伎を生で観られるという環境にあるのですからね、もう少しまともな観方というものが出来ないのかと…。
ともあれ。
今回、この演目を拝見して一番感じたことは、
「“ニン”て何だろう?」
ということだったりしました。
と言うか、私の観方がずれていて、本来の“ニン”というものの話とは違うのだと思うんですが。
大膳役の三津五郎丈、大変大きくてご立派な様子で、国崩しという悪役中の悪役といった感じがとても良く出ていて良かったです。同情するようなところは微塵も無いし、もう性根から悪い、という感じで。
ただ、拝見していて単純に
「演ってらっしゃる役者さんが一見してどなたかわからない、という場合、そのお役は役者さんの“ニン”と言えるものとなるのか?」
と。
大膳の拵えが従来のお役と比べるとかなりなもの、というのもあって(あの髪がとにかく凄いと思う)特に一見してあれが三津五郎丈とわかる、というのはなかなか難しいものがあったような気がして。勿論それは観ている席にかなり左右されるものだと思いますが。今回の私の席は最初に書いたように三階の上手ギリギリのところでしたので、丁度大膳が出てきてからずっと、碁を打ったりといった舞台中央に向いた体勢が続いたものですから、顔がほとんど見えないというのもありましたし。声すら聞こえ辛い時もありましたからね。
それこそ歌舞伎初心者の方のよく言う“だってあんなお化粧じゃあダレがダレだかわかんないじゃん〜”という言葉もありますしね。“慣れ”とかいうものは絶対にあると思いますから<役者さんの判別(?)について。*1
ただ今回、具体的にどんなところが?と言われるとこれもまた返答に困るのですが、余りにも“いつもの三津五郎丈らしさ”というものを感じられなかったので、うーん、と思った次第。
今回、初役で“お役の幅が広がった”ということなのでしょうが。*2
と、なんか見当違いなことと思いながらも、しっかり雪姫を堪能していた訳ですが<撲殺。
でも堪能しつつも、これまた疑問。
「姫であんなに衿抜いた着付け、アリ?」
爪先鼠の幻想的な風景の後、*3髪と言わず抜いた襟足(…というかもうあれは完全に背中)にも入り込んでいる桜の花びらにエロティシズムを凝縮させているのだと思うのですけど。
…と思いつつ(苦笑)、思い出していたこともあり。
『若手花形歌舞伎・花之巻』福助丈の項に

金閣寺』の前に浮世風呂に奉公する雪姫

という一文があり、これがずっとどういうことかわかってなかったんですね…。
で、ちょっと調べてみましたところ、こちら(ページ中盤)に、これがどういう意味なのか、というのがありまして。*4
「生まれながらの“姫”じゃないからいいのかしら〜。」
と…。*5
しかししかし、更に色々『演劇界』の別冊などで女形さんの写真を見てみまして…
「意外と姫って衿抜いてるかも。」
という結論に達しました(苦笑)。特に『女形の名舞台』の一番最初のカラーページに載っている魁春丈の雪姫の写真を見ると、
「そうか、こんなもんなんだー。」
という気が(苦笑)。*6
まーでも流石にと言うべきでしょうか、“歌舞伎らしい”という演目で満足満足。
朝一にこれっていうのもちょっとなんだか勿体無い、というのもやはりありますけどね。納涼ならでは、というところでしょうか、この贅沢さ。
あとざっくりその他思ったことと言うと

    • 大膳の台詞に「布団の上の極楽責め」というのがあるというのを、どちらかのブログで拝見していたとは言え、この台詞がそれはもうしっかりと耳に入ってきた自分て一体。
    • 碁を打つ場面が何度か出てきますけど、あれってちゃんと打ってるのかしら?
    • 鬼藤太は気付くといつも碁石を片付けていた(笑)。
    • 倶利伽羅丸を滝にかざした時に出る龍が…。いくら下手側奥とは言え、桜の木で隠れて見えないような小ささってのはどうなの。*7
    • 雪姫縛るのって結構手間かかってる(笑)。しっかり縛ってそうで仕掛けアリの縛り方だものね。黒子さん大奮闘。

…こんなところでしょうか、今思い出すことと言ったら(泣)。


そして終わって幕間。
「トイレ行って来る。」
と言って、猛ダッシュで西側売店まで(笑)。ついでに一階最前列を通って、桜の花びらを何枚か拾いつつ(失笑)。*8
残念ながら写真は出ていなかったけれど(三部からだったらしい)、鯛焼き買って戻る。

『橋弁慶』



うーん、もうこれは…。
いや基本的に花道での所作がかなりあったので(特に弁慶)見えなくてなんだかなー、ってのが多かったというのが大きいですね。
花道見えないと
「『十二夜』の時みたいに鏡があれば!」
といちいち思う癖がついてしまった人というのはいらっしゃいますか?(爆)
でも…ちょっとやはり獅童丈。柄は大きいし、顔立ちもいいし(少なくとも私は好きだ)弁慶はとっても合っていたと思うのだけれど、やはり動きに不安定さが目立った気が。
特に確か牛若丸と並んで飛んで、という所作で、腰が入っていないというのが気になって。着地した際にぶれているように見えました、腰が。衣装のせいもあるかも知れませんが…。
んー、まぁねぇ…中村屋中心の公演以外で大きなお役がつくのはなかなか無いと思うけれど…って最近玉三郎丈も起用してくださってますが。本当にこのところのご活躍と今回の公演を見て、これからどうするのかなぁ、などと本当に大きなお世話ながら思ってしまいました。“歌舞伎の世界だけでなく”という意欲を感じるだけに、余計に心配と言うか勿体無いというか。
とにかくワタクシ、あの顔が好みなので(笑)、あれに合ったお役が沢山あるじゃないか、って思うと惜しくてならない、という。
で、方や七之助丈…。こちらはまた牛若丸という中性的なお役がとても合っていて。弁慶との対比が良かったです。
絵面として非常に綺麗な一幕でした。

『雨乞狐』



このところの勘太郎丈の、ちょっと怖いまでの“進化”ぶりにまさに見合った演目だと思っていたのですが。
見事過ぎ。
またこんなこと言っても仕方ないことなんですけど、浅草での『四の切』を拝見しなかったのが悔やまれます。って単に今回と同じ狐の役だったので、比べてみたかった、というだけの話なんですが(汗)。
何て言うんでしょうねぇ…“野孤の五変化”ということで、狐が化けたということですけど、実際のところは勘太郎丈の五変化”と言うか。あれだけの短い時間であの五役踊り分け、というのが単純に凄いなと。
狐の身軽さ、っていうのが特に印象的でしたね、私は。また話がアレなんですが(苦笑)、勘三郎丈襲名時の『四の切』での菊五郎丈の狐の“軽さ”、飛び跳ねているのに着地した際の音がほとんどしないというのに「流石。」という気がしたことを思い出しました。
…あれ? 今筋書見たら、解説のところに“勘太郎狐の名前を貰い”って書いてあるんだけど…台詞ではしっかり「勘九郎狐」って言ってるよね? あらすじの方も“勘九郎狐”って書いてある。
観ていて
「あー、“勘太郎”にはならないのか。」
と思った記憶がありありしているのに。この解説って誤植かしら、やっぱり。
ともあれこれから先の勘太郎丈が益々楽しみになった一幕。*9


でー、こっから先は芝居と関係ナシな覚え書き。

    • 初日と売店の様子がちょっと違ったところが。手拭い売り場の品揃えが秋の模様のものになっていたようです。
    • マッチのラベルが“八月納涼歌舞伎”と各演目名しか入ってなかった。いつからこうなったんだろう? これから先もずっとなのかな?*10
    • 去年と確か一昨年もあった、食事予約のおまけ、予約終了後は300円(だったっけか?)で売られた各役者さんの紋とサインが入った団扇、今年は無いの? 確かに客席でそれぞれの役者さんの紋が入った団扇がぱたばた、ってのはかなり壮観だったけど(苦笑)。でもあれがまた各役者さんのご贔屓さん方が“妍を競う”…というのとはちょっと意味が違うみたいだけど(汗)、何と言うか“夏芝居”っぽくていい感じだったんだけどなぁ。という訳で、家でも愛用の去年購入した福助丈団扇、扇子も持って行くけれど、明日も持参します(笑)。今月過去三回もしっかり持って行ってたし(失笑)。



嗚呼…もう死ぬほど眠い…。こんなものをトラバしていいものかと思いつつ…すみません、歌舞伎ぶろぐびーぷるをまたも汚します…。

*1:私自身、この点についてはまだまだ、というところは多分にありますし。大体今回、染五郎丈もにわかに気付きにくいくらいでしたし私(失笑)。鬘のせいでしょうか、妙に丸顔に見えて。ちなみに母親はこの演目終わって一言「橋之助出なかったのね。」って(死)。あの中で一番わかりやすいお役だったのに、と思うのは私だけですか?(泣)

*2:と、ここで先日エントリーした記事を確認していましたら、記事内リンクを張り直さないといけない、ということに気付き、修正。まぁそれでも時間が経てばそのうち元記事の参照は出来なくなってしまうと思うんですが。

*3:しかし最大の見せ場ということでああいう演出になっているのでしょうが、ちょっと降らせ過ぎな気がしたんですが、桜の花びら。

*4:しかしこちら、アンテナにも登録してあります竹本葵太夫丈のページだったのですねぇ(汗)。今回検索で初めてこの記事に気付いた次第。ちゃんと読まねば…。

*5:でも“三姫”と称されるお役なんだよね。しかしそれは飽くまでも“お役の性根”と言うか、演じる側にとって“大きなお役”という意味なのよね。

*6:しかしこれって丁度上記の雪姫に関する記事と関連した写真なんですな。

*7:『鳴神』の注連縄切って解き放たれる龍神もそうだよねぇ…。

*8:幕の中では掃除機のモーター音が響き渡っておりましたです(笑)。

*9:提灯の鶴松くんも、多分普通の子役時代は踊りまでは習ってなかったでしょうに、あの高下駄での踊り、見事。こちらもこれから先が楽しみ。

*10:ちなみに七月の時も役者さんの名前は入ってませんでした。ついでに通常縦書きのラベルが横書きでした。