三月大歌舞伎・昼の部感想



久々に観劇日に感想文(汗)。さくっとね<と言ってさくっと出来た試しなし。


◆三階十列中央よりやや上手

『吉例寿曽我』



音羽屋兄弟*1が幕開きから花道を走る! という話を拝見していたのですが、電車が強風のため徐行運転で遅れ…。それでも10:30には着くような時間設定をしておりましたので遅刻はしませんでしたが、朝ごはん代わりの鯛焼き、買ったはいいが食べる間も無く開演。
そして正直、思ったより花道での掛け合いが少なく、本舞台での所作が長かったことに満足したり。いやそれでも「みじかっ!」とは思いましたけどね。
その後、えーと浅葱幕落とされてから石段が出て、愛之助丈と進之介丈が登場するまでしばらく間があったんですよね?(汗) その間に急いで鯛焼き食らう私…。
愛之助丈のもみ上げが気になった(苦笑)、お二人の掛け合いでした。次への転換のがんどう返しも凄かったですねぇ。後ろに隠れるまでの間、徐々に角度が変わっていくのに微動だにしなかった両丈に改めて役者さんの身体能力の高さを思い知らされました。
そしてまたその後、かなり長いこと黒子さんの覆いが立ちはだかり、いよいよ大ゼリを使った勢揃いの二場へと。
某所で“そのままお持ち帰りしたい”という感想を拝見していましたが、確かになー、と納得(笑)。三階からの眺めだとことさらそう思えるのでしょうね。
特に松也くんと吉弥丈と芝雀丈が素敵でした。芝雀丈は近頃本当にすっとした感じがお父様にそっくりになられて、と思います。*2
しかしこの演目、上演時間の1/3は舞台に役者さんがいなかったのでは? と思うんですが(汗)。でもだれることが無かったのは音楽の力、でしたね。

吉野山



開演前に鯛焼き食べる時間は無くなろうとも、舞台写真の購入は朝一で、のワタクシ。今日も“福助丈全買い”致しましたですよ、えぇ。幸四郎丈との“男雛女雛”も無論漏れなく。
こちらもあちこちで拝見しておりましたが…。まずはとにかく福助丈が可憐。一体どうしたんでしょう…というのは失礼ですが(汗)、本当にこのところ、児太郎時代のような美しさですね。お顔の拵え方を変えられたのかしら、というのを今改めて写真を拝見して思ったりもしましたが。
そして幸四郎忠信。確かに怪しいかったです…。
思わず
「仁木弾正かよ!」
という突っ込みが入りましたですよー(汗)。
顔の拵えが狐のソレじゃないんですもん…。帰宅して手持ちの『吉野山』の写真*3と色々見比べてみたんですが、幸四郎忠信って紅をほとんど使ってないんですよね。今日買ってきた写真を見ると目元に少し入っているように見えるのですけれど、実際に観た印象では、入っていたかも知れませんが、それより両まぶたと眉間の辺りにきつい影みたいなものがあるという感じで、怪しさ満点。*4
「君なら頼朝どころか平家まで一人(一匹)でやっつけられるよね…。」
という気が(苦笑)。でも初音の鼓に頬摺るところは、“親を慕う子狐”という感じが伝わってきました。
そう言えば“女雛男雛”のところで、お約束の
「ご両人!」
という大向こうの他に
「両九代目!」
というのがかかったのが妙にツボにはまったワタクシでした。
あとは筋書の福助丈のお話にあった常盤衣。観ている時には正直ピンとこなかったんですが(汗)、これも帰宅して写真見比べてようやく納得。色自体もお話の通り赤では無いし…橙、というのが一番近いのかしら? それに変わった意匠ですよね、色使いが。今日の写真見てから浅草の写真を見ると常盤衣、地味に見えて仕方ありません(苦笑)。*5
あ、あと今日の舞台とは直接関係ありませんが、福助丈の写真に方脱ぎの時のものが無かったのがちょっと残念。

『道明寺』



昨日死ぬほど寝た、というのもあったと思いますが、二時間の長丁場でしたが眠くなることもなく。流石にお尻は痛くなりましたけどね(苦笑)、引き込まれましたね、完全に。
主人公は飽くまで菅丞相ですけれど、女形のお役にこういう言い方があるのかどうか疑問なんですが、とにかく芝翫丈の覚寿が大きく立派で。幕開きからすぐに杖で折檻という場面あり、娘を殺された無念やそれに対する復讐と、*6武家の女、というものの強さ・弱さ・悲しさ、全てがあり、これぞ“大役”と感じました。
“鶏が死骸の上で鳴く”という話に
「『関の扉』みたいだなぁ。」
と思ったら、謡にそのようなことが入っていたのに「ははぁー。」と思ったり。*7
“実は木像”の菅丞相、“本物”の菅丞相、どちらも素敵で思わず帰りに写真を買い足してしまった私でした…。*8 *9


で、すっかり満足した終演後、先のエントリー通り“道明寺”をお土産に、更に『六条亭の東屋』さんで話題になっていた『イヤホン余話(B)』を戴いて、*10帰路に着いたワタクシでございました。

*1:亀三郎丈・亀寿丈。

*2:というか私が単に気付いてなかっただけか?

*3:一昨年の浅草の勘太郎忠信・亀治郎静と、亀治郎忠信・七之助静しかありませんですが。

*4:しかも源平合戦の踊りの途中だったか、向かって右のシケが眉から眉間にかけて張り付いてしまい、“眉間に傷”というような感じになって益々強面に…(苦笑)。御本人も気にされていたようなので、強面度更に倍、だったのかも知れません(汗)。かなり長いこと張り付いていて落ちず、途中で腕を上げた時に払い落としていらっしゃいました。

*5:ちなみに浅草、七之助丈は白地に普通の(?)花模様、亀治郎丈は白地に鳳凰、でした。あと忠信の衣装、今回幸四郎丈は茄子紺の無地で、というお話をされていましたが、浅草の時の勘太郎丈も茄子紺に無地でした。亀治郎丈は源氏車の散らしが入ってましたけど。色味が違うのかしら…?

*6:あの“嬲り殺し”は『先代萩』の八汐に通じるものがありますね。怖かった…。

*7:しかしあの鶏、本物のようでしたねー。先月の『浮塒鴎』のお猿と言い、小道具的な動物ってかなり忠実に作られていますよね。「でもなんで『鳴神』とか『金閣寺』の龍ってあんなにしょぼいの…。」とかふと頭をよぎったりしましたです、はい。

*8:そして覚寿も買うつもりでいたのに、それはすっかり忘れてしまった(涙)。

*9:あと、筋とはまた全く関係ない話ですが。芦燕丈の拵え…皺の描き方が妙にカクカクしていて、余りにも不自然なのでは、と思ったんですが。皆さんあんな感じでしたっけか?

*10:朝からうっすら戴こうと思っていたものの、『吉野山』と『道明寺』の幕間でハッキリと思い出し、一階のガイド貸出コーナーに言って聞いてみたところ、しばしの間があり「今、切らしていまして…。」と言われがっくり。しかしその後、他の方から「昼の部が終わったら入っている筈ですので。」との嬉しいお言葉が。「ガイド借りてらっしゃいますか?」という問いに「いや、すみませんお借りしていないんですが…。」と答え「希望者が多いから借りた人にしか渡さないようになったのかなぁ。」と思ったら、「では御手数ですが終演後にこちらに来てくだされば。」という有難いひとことを戴き。そして終演後、すぐは人がごった返していて大変かと思っていたのだけれど、仁左衛門丈の写真を買ったり道明寺を買ったりということをしているうちに時間が結構経ったのでどうかな、振り返ってみたら既にお客さんの姿はほとんど無く。近づいて「すみません…。」声を掛けたら、顔を覚えられていて(笑)、即座に戴けました。ありがとうございました、ガイドカウンターの皆様。今度…歌舞伎座ではどうかわかりませんけど、五月の演舞場では一度、利用させて戴くつもりでおりますので(汗)。