シネマ歌舞伎『鷺娘』



前売りと当券
昨日、夜の部観劇前に行って来ました、シネマ歌舞伎『鷺娘』。


14:00からの回に間に合うように家を出て、東劇に着いたのが13:40頃だったでしょうか。窓口で前売りから当券に引き換えなくては、とのろくたしていましたら、突然10人ほどの人が押し寄せてきたのでびっくり。東劇前の信号が変わって渡ってきた人たちだったようなのですが。しかもなんだか皆さん殺気立ってると言うか、慌てている感じ。
なんだかその様子に心配になりつつ上に上がると…列。軽く100人は並んでましたね。2列並びであそこまで並んでいたというのを考えるともっとかな。開場前なので並んでいても別に不思議は無いと今では思えるのですが、ちょっとその時は前述の窓口の人々の様子などがありましたので、びっくりするやら焦るやらで。係員さんは「お席はありますのでー。」としきりにおっしゃっていたので入れないことは無いか、と安心はしましたが。
そして中に入ると、これもまたびっくり。入れ替えしたの?というような人の多さ。入場時に私の並んだ方のもぎりの人がもたもたしていたので、入るのが遅くなったんでしょうが。前半分、ほとんど席埋まっていて。と言ってもこれもまた前3列くらいは空いていたようですけど。
結局私の座ったのは後ろから数えた方が早いようなところ。まぁこれも中央を狙って座ったから、というだけの話でもある訳ですが。
最終的には7〜8割ほどの埋まり具合でしたね。
終映後だと忘れかねないのでパンフレットを先に買い、上映を待つ。


で、感想なんですが。
敢えて苦言、と言うほどの高尚なものでもありませんが。
音が酷過ぎる。
玉三郎丈の踊りと映像が美しかった分、余計に酷さが強調された感じ。プラスにマイナスを掛けるとマイナスの値の答えとなる数学的理屈が図らずも通用してしまった、というところでしょうか。
映画館の音響、というものとの相性も良くなかったのだとは思うのですが、明らかに先に上映された『日高川』より『鷺娘』の方が音が酷かったので、これは作品として既に問題であったのでは、と思います。


シネマ歌舞伎は第一作の『野田版・鼠小僧』、第二作の『野田版・研辰の討たれ』に続いて三度目の鑑賞となる訳ですが。
今までの二作は普通の劇、というか台詞劇であったので、音が酷いということが気にならなかったのでは、と思います。実際“音をだけを聴く”という場面もありませんでしたし。
しかし今作の場合、台詞はほとんど無く、否応無しに唄が耳から入ってくるものの全てとなる訳で。そんな状況であの音は…。


あと今一つ“シネマ歌舞伎ならでは”の映像の細かさ、というのも堪能出来ませんでした…。
始まる前の定式幕のアップの「繊維まで見える!」というのと(笑)、『鷺娘』の最後の場面の降りしきる雪の鮮明さ・美しさは「流石…。」と思いましたが。
ただこれは今回私の座った席が良くなかったというのと、前二作を前方過ぎる席で観たからだと思うのですが。
基本的なカメラワークも違いますしね。『鼠小僧』と『研辰』は役者さんのアップが多くて、それこそ「見え過ぎ!(汗)」というところまで見えてましたから。*1対して今回の『鷺娘』は、踊りですから、勿論何度か玉さんのアップなどもありましたけれど、基本的には“引きの画”。そうなるとどうも歌舞伎座三階席から双眼鏡で観ている、という気分がしてきまして…(泣)。
それは勿論、後ろの席で観てもあれだけ綺麗に見えたというのはシネマ歌舞伎ならではだとは思うのですけど。普通の映画ではあんなに綺麗に見える訳ありませんし、逆に“歌舞伎座三階席から双眼鏡で観ている”という感じにもならないかと。
大画面を間近で観るというのは絶対に疲れるんですが(『研辰』二列目で観て実感しましたからー)個人的にはもっと前で観たかったなぁ、という気がしました。
『鷺娘』の最後の鷺の衣装なんて、もっと羽根の刺繍がはっきり見えると思ったんですけどね。


てか基本的なところ、私自身のコンディションが良くなかったんで、こんな感想を持ってしまったんでしょう。
機会があれば、諸々整えて再見したいです。嗚呼無念。

*1:正直『研辰』の際の勘三郎丈のアップには「うわぁ〜!!」と思うこと何度もアリ(笑)。物凄い汗に文字通り圧倒されましたもので(苦笑)。