劇評

歌舞伎:三越歌舞伎(三越劇場) 与兵衛の精神のぶれ描いた獅童
獅童猿之助一門の若手が中心の舞台。最初が「車引」。猿弥の梅王丸、春猿の桜丸、段治郎の松王丸。柄にあった配役で、段治郎に大きさがある。猿弥も勢いがあって、荒事らしいが、花道が短く、六法をきっちりと踏めないのは気の毒だ。春猿は優しげな中に強さを出した。薪車の時平。
続いて「女殺油地獄」。放蕩(ほうとう)息子の衝動的な殺人という現代にでも起こりうる題材の近松門左衛門作品である。
獅童の与兵衛は、前半は甘く優しげだ。半面、思い通りに事が運ばないと、突如として怒りをあらわにし、義父、徳兵衛(寿猿)や妹、おかち(鴈成)にも手をかける。虚勢を張っているわりには気は小さく、武家のおじ、森右衛門(寿治郎)に叱責(しっせき)されれば、身をすくめるばかりだ。
どこにでもいそうな人間を、獅童は素直に見せる。勘当を受けた後の徳兵衛と母、おさわ(竹三郎)の嘆きを盗み聞き、現状を反省したのもつかの間で、次にはお吉(笑三郎)に金をせびり出す。ここからの変化が不気味である。不義になれと迫り、だめとなると殺害を決意。うっとりとしたような表情で刃物を振るう。精神のぶれが無理なく描き出される。
笑三郎は色気があってしっとりとした世話女房ぶり。誰にも優しい面倒見の良さが招いた惨事を説得力あるものとした。段治郎の七左衛門が手堅く、竹三郎が息子かわいさから甘やかしてしまった母をうまく見せる。猿弥、欣弥が好演。22日まで。【小玉祥子

毎日新聞 2006年6月15日 東京夕刊

写真は『女殺油地獄』より与兵衛(獅童)とお吉(笑三郎)。


いつもまず悪い事は書かない毎日新聞の劇評だけでなく、今回の三越に関しては渡辺先生も結構褒めてますよね、獅童丈。率直にびっくりしたんですが(汗)。そうなるとやっぱり観たかったなー、なんてことも思うんですが、予定詰まり過ぎてるので無理、ということで。お金も無いし、というのも勿論ありで。
しかし今回、テレビ東京16:00からの『レディス4』でしたっけ、アレに出演て無かったですよね? スケジュールの余裕が無かったのでしょうか。チェック入れてたんですけど、漏れてないですよね…。

《2006.6.18 記》