劇評

歌舞伎:芸術祭十月大歌舞伎(歌舞伎座) 心の変化うまく見せた仁左衛門
  〜中略〜
夜の最初が「怪談牡丹燈籠(ぼたんどうろう)」(三遊亭円朝原作、大西信行脚本、戌井市郎演出)。怪談の中に3組の男女の姿が描かれる。浪人の新三郎(愛之助)と幽霊のお露(七之助)、旗本の後妻、お国(吉弥)と愛人の源次郎(錦之助)、そして伴蔵(仁左衛門)とお峰(玉三郎)。
仁左衛門が、裕福になるに従って貧しいころの影をひきずった妻をうとましく思うようになる伴蔵の心の変化をうまく見せ、玉三郎はお峰の根にある人の良さと哀れさを表現した。吉弥と錦之助が、お峰・伴蔵とは対照的に落ち続けても愛を全うした2人の悲劇を切なく描き出した。三津五郎円朝で見事な話芸を披露し、久蔵では純朴な馬方ぶりを見せる。吉之丞のお米が好演。
  〜後略〜
毎日新聞 2007年10月15日 東京夕刊

写真は『怪談牡丹燈籠』より伴蔵(仁左衛門)とお峰(玉三郎)。