劇評

歌舞伎:五月大歌舞伎(歌舞伎座) 強欲でユーモラスな菊五郎の道玄
昼の部は「暫(しばらく)」から。海老蔵の権五郎は車鬢(くるまびん)がよく映り、錦絵から抜け出たよう。おおらかな十八番物の世界が広がる。翫雀の震斎がいい味わいだ。左團次の武衡。
「寿猩々(ことぶきしょうじょう)」は富十郎の猩々と魁春の酒売り。猩々がゆったりとした世界観を展開する。「手習子」は芝翫。少女のあどけなさを表現する。
「加賀鳶(とび)」は「木戸前」から「赤門捕物」まで。菊五郎初役の道玄がしたたかで強欲でユーモラスな人間像を描き出して魅力的。時蔵のお兼に、ほどの良い退廃感と色気がある。梅玉の松蔵がすっきりとし、梅枝のお朝がいい娘ぶり。
「戻駕(もどりかご)」は松緑の次郎作、菊之助の与四郎、尾上右近のたよりの取り合わせがいい。
  〜後略〜

写真は『加賀鳶』よりお兼(時蔵)、道玄(菊五郎)、松蔵(梅玉)。