十一月歌舞伎公演



国立劇場に行ってきましたー。
最近贅沢散財しすぎなので、削りに削って一番お安い席にしようかと思っていたのですけど、3階最後列で通路から遠い席になると結構な圧迫感を感じたり、その他トラウマ的なものがあったりもするので2等席に。





3階9列の通路際で、とても観易い席が確保出来てラッキー。

歌舞伎十八番の内 外郎売

何度拝見しても十八番ていいですね。大らかなところが理屈とか抜きで楽しめますもん。
ちょっと大向こうさんが少なくて寂しい感じがしたんですが、團十郎丈がご復帰された3年前の團菊祭初日の記憶がデフォルトっぽいワタクシなので、それと比べるのは無茶というもの。*1
右之助丈の化粧坂の少将がきりっとカッコ良い。新悟くんの喜瀬川が綺麗で可愛い。*2芝雀丈の大磯の虎も素敵。亀三郎丈の景高、そして主役の團十郎丈の外郎売と併せて、どこを観て良いか困る(笑)。*3
言い立ての地名がぞろっと出てくるところ、神奈川在住の人間なので、ある程度馴染みのあるところが出てくるのにいつもなんだかにやっとしたり。*4

傾城反魂香

正直“またですね”的な気持ちでいたのですけど。
まず、出てきてすぐ、花道できょろきょろと周りを見回す又平團十郎丈がとても若く見えたことに物凄く驚く。
よく考えてみたら私自身の観劇歴が浅い上に、御病気で控え気味の御活躍ということが相まって、團十郎丈の“普通の人”を拝見するのは初めてなのでは、ということに気付きました。“十八番”とか“侍”などの重めのお役ばかりなのでは、と。*5ということで、凄く新鮮な気持ちで拝見。
正直、吃りの部分と台詞の部分のバランスがちょっと?な感じがしたのだけれど、吃り故の哀しさ・失意、手水鉢の絵が突き抜けたことの驚き、名字を許されたことの嬉しさ、という感情の振り幅が今まで拝見した役者さんの中で一番大きくて豊かだった気が。あと素朴な人柄、というのも一番際立ってたかも。
やっぱりあれは團十郎丈の愛嬌的なところから来たものなのでしょうかね。と、こちらが受け取るからこそのものなのかも知れないけれど。
勘太郎くんや吉右衛門丈の又平が記憶に残っているのだけれど、意外や今回の團十郎丈の又平が私の中で数歩のリードを取った、という感じ。*6

大津絵道成寺

道成寺と藤娘を足して2で割った感じ?”と気楽に思っていたのですが。
凄く面白かったですねー、これも。
可愛らしい藤の精と、座頭、鷹匠、船頭の対比が素敵。特に船頭が凄く鯔背でカッコ良かった。もうちょっと長く出て欲しかったな(笑)。
最後の鬼は従来の鬼の拵えとは違って、眉とか髭が金の棘みたいで面白いし。飽くまで大津絵の鬼、ということなんですねこれはきっと。
弁慶出てくるし、矢の根の五郎は出てくるし、面白いものを詰め込んだ贅沢な一幕。黙阿弥作、ということで納得。*7


先日の名古屋行きで、ういろうを土産に買ったのですけど。
ちょっと変わったのを、と思って薄い形のものを買ってきたら、まさに昨日、家族から「ういろうらしくなくて何だかなな感じだったよ」と言われ。
で、今日。
外郎売』にちなんで小田原のミニ物産展がロビーの端で開かれていて。
外郎売』に出てくるういろうは滑舌が良くなる薬だけれど、お菓子のういろうもアリだったんですねぇ。*8
という訳で買いましたよお土産。





さて、満足して頂けるでしょうか…?

*1:あの時の客席は凄かった…勘三郎丈襲名初日以上のものは無いと思ってたんだけど、軽く超えましたね。大向うの数がどうこうとかいうんじゃなく、やっぱり空気感がね、もう全然違った。文字通りの“待ってました!”で。

*2:一気に大人の女形さんの風格が出てきたような。

*3:実際かなりあちこち観てました…(苦笑)。

*4:海老蔵襲名の際に松緑丈の『外郎売』を拝見した時、たまたま石川在住の友達と一緒で。このくだりがよく分からなかった、と言われたのが記憶にあって、余計に分かるのは楽しい、と思えるのね。

*5:単に忘れているだけかも知れませんけれど…。

*6:ちなみに最初、土佐将監が竹藪に逃げ込んだ虎を確かめるために眼鏡を出した時、客席の一部が異様にウケてました。まぁ確かに面白いと言えば面白いところではあるけれど。あと、最後に光起となった又平が正装に着替えた際に、裃の前立て(?)の紋の位置が左右ずれて段違いのようになったままだったのが物凄く気になったり…。

*7:そう言えば最初、藤娘の被っている笠の上が丸くよく光ってるなー、と思っていたのだけれど。後で手に持ったのを見たら、丸く金で塗ってあったのね。そりゃよく光るて(笑)。あと、振り出し笠も藤だったのが面白かった。それから藤の精の裾の裏地も藤の柄だったんだけど、花が赤っぽい感じで遠目に見るとなんかにんじんみたい…とか(苦笑)。あと、「亀鶴丈の弁慶ってば、なんか妙に色っぺえんですけど…。」と思ってよーくお顔を見たら、口元に紅しか差してなかったようで。口角に墨が入っていなかった様子。やっぱりあの墨は勇ましさを示すのに必要ねー、と再確認<マニアですええ(笑)。

*8:改めて調べてみたら、小田原、名古屋に限らずだけじゃないのね、ういろうって… ういろう (菓子) - Wikipedia