吉例顔見世歌舞伎



黒地に白く、歌舞伎座の鳳凰。基本的に写真は以前よりレンタルしているこちらにまとめてるけど、この写真はあんまりリアルタイム性を感じなかったので、テストも兼ねてこちらへあげてみた。
今まで何度も三階東袖に座ってるけど、全然気付かなかった。…八月も九月も座ったんだけどなぁ(八月はB席だったんで、見えなくても当然だけど)。こんなところにまで歌舞伎座の紋が入っていたなんて。もしかして入ったの、つい最近?
って、この写真だけじゃドコだかわからないな(苦笑)。三階席の縁にぐるりと設置されている照明。本番中は舞台を照らしてます。撮影したのは幕間<当然か(笑)。


歌舞伎座に“通い出した”のは今年に入ってからだけれど、去年は3回観に行った。
そのうち1回が顔見世。
富十郎丈の一世一代の『船弁慶』が観たくてどうにか切符を手に入れたら、観劇数日前に体調不良で入院というニュースが流れて絶叫したとか(ギリギリ観劇1日前に無事復帰されて何よりでした…)、『松竹梅湯島掛額』の菊ちゃんの人形振りが綺麗だったとか(前半の『お土砂』の菊五郎丈のはじけっぷりも凄かったな(笑))、どうせ行くなら夜の部も、って某筋(笑)からGetした株主優待券、朝イチで交換したらかぶりつきが来てビビリまくったとか(失笑)、『盛綱陣屋』で左團次丈が間近で観れる〜、ってワクワクしてたら、最後のいいところで盛綱さんち(笑)の家来衆に視界を遮られて全く見えなくて泣いたとか(苦笑)、『浮かれ坊主』で「なんであたし、こんなんここで観てるんだろ…」って思ったとか(爆)、『河庄』の治兵衛が鴈治郎丈でちょっと苦手なお方なんで(女性のお役は凄いけど、どうも立役は…と思っていたんだけど。という話は以下に改めて)また萎えそうになってたんだけど、目の前にほとんどいずっぱりだった時蔵丈の小春が無茶苦茶綺麗でマジ感激したとか、ここで確認しただけでもこれだけのことがゾロゾロと思い出された(笑)。

箙の梅



“何十年振りの上演”
ということが予習時に頭へインプットされていたものですから、古典古典したもの(笑)かと身構えていたのですが。
いざ始まってみると言葉が平易でわかり易い。
終わってから筋書を見たら、作者岡本綺堂。なんだ新歌舞伎だったのか、なるほど納得…。ついでに(?)“何十年振り”というのも、歌舞伎座での上演が四十八年振りとのことで、前回上演は三年前と。*1
大切に大切に、井戸の水が汲み難くなるほどまでに伸びても切らずにいた一本の梅の木。
それを通りかかった若武者が、自分の矢の尽きた箙に挿したいと所望すると、一目惚れしたその梅の“主”である娘が快く差し出す。
有難く受け取った若武者は戦場へ。
その姿を見送り、そこで終われば良かったものの…。
若武者の戦う姿が見えたがために、心配になり戦場へと駆け出す娘。
「そんなところに行っちゃうかね!」
という感じですが、農民は結構、武士の戦ってる姿を間近で見物、というようなことがあったらしいですねぇ。*2
で、場面変わって梅玉丈演じる若武者の立ち廻り。
この時、後ろに紅白の梅の木が何本か立っていたのですが。
  ぱりぱりぱりぱり
「…何の音?」
梅玉丈の箙に挿してある梅の枝と後ろの舞台装置の梅の木の枝が絡まって、梅の花が散りかかってる〜。と思ったら、舞台装置の木の枝が一本折れて、箙の梅の枝に絡まってしまいました。ぺろん(汗)。*3
この後、無事に若武者は、はぐれていた親兄弟と再会出来るのだけれど、若武者を心配して戦場へと行った娘は流れ矢に当たり、梅の木と一心同体のように育ったが故に、若武者の箙の梅の花びらが散ったのと同じ運命、と死んでしまい。
今わの際に胸に抱いた梅の枝を、娘の追善にと再び箙に挿し、戦場へ向かう若武者…。
「形見と言えるその枝まで持ってっちゃいますか〜!」
風流を弁えない東夷、なんて言う前に、自分の突っ込み体質の方がよっぽど…と情けなくなった一幕でした。トホホ(泣)。

  • 梅玉丈は初めて拝見したかと。*4若武者の凛々しい姿が素敵でした。
  • 孝太郎丈は軽々しくない、初々しい娘という感じが出ていてこれまた良し。*5

2004.12.21 記

*1:でもその前が昭和三十九年だからな。梅ヶ枝を現菊五郎丈がまだ丑之助時代に演ってるっていうだけで、いかに上演されていなかったというのがわかろうと言うもの。

*2:江戸時代には処刑が公開されて、それを一般人が見物ということがあったりするし…共通するところがあるような。娯楽の一つという感じだったのか。

*3:確かすぐ後で自然に落ちたんですけど…。

*4:福助丈が児太郎から福助へと襲名された時、同時に前名福助から梅玉になられたので、当時の筋書を拝見するとお二人御一緒の写真が多くて、なんだか初めてという気がしないのだけれど。しかも実は梅玉襲名時の配り物であるお扇子を、縁あって(?)持っている私だったりします…(滝汗)。

*5:途中で「あぁ、若い娘さんだな。」と思わせるような仕種があって、それがハマってました。