第12回演劇人祭



先日エントリーした『第12回演劇人祭』行ってまいりました。*1


開演13:00ということで、イナカ者の私には「昼ごはんどうしよう?」な時間(苦笑)。
そこで早めに行って近くでランチでも…という話になり、待ち合わせを歌舞伎座前11:30にし、15分前に着くように設定した時刻に自宅を出るも…途中駅で人身事故のため、電車止まる。乗換駅構内のキャッシュディスペンサーでお金をおろしていこうと思っていたというのもあったのに、もういきなり波乱。
さっさと見切りをつけて振り替え輸送の路線に乗り換えたものの、30分近く時間がずれて焦る。まぁでもこのお陰で東銀座へ向かうまでの地下鉄の運賃分が浮いたのだけれど(苦笑)。


結局無事ランチにありつけ、12:30の開場と共に中へ入るべく戻ると歌舞伎座前、まだ開場してないっつのに人が少ないったら〜。
そして入る前にパンフレットらしきものを既に持っている人を見かけ
「あぁ、やっぱりあーいうものがあるのねぇ…買おうかどうしようか…。」
と思っていたら、なんと入場後、中で配布されていてちょっとびっくり。しっかり戴く。
こんな立派なの。わかりにくいかも知れませんが、表紙は金。
いつもの筋書と同じサイズ(A4)。まぁ中身は式次第と演目の紹介、演劇協会の歴史と今回演劇功労者として表彰された方々の中から、舞台美術の朝倉摂氏と中村雀右衛門丈の対談、あと大量の舞台関係の会社の広告で(笑)、華やかさというのはありませんかでしたが(しかし広告のお陰で無料配布となったのでは、と思いますが)。


で、最初の30分は第一部・祝典として、前述の演劇功労者の皆さんの表彰がメイン。司会は二部も通して、NHKの葛西アナウンサー。
しかしですね、来賓としてご挨拶をされるとあり、更に演劇功労者として表彰されるとあった雀右衛門丈のお姿が無く…。演劇功労者の方々の表彰に関しては、11名の方のほとんどが名代の方が賞状を受け取られていたのですが、雀右衛門丈に関しては、名代の方もいらっしゃらなければ、ご挨拶に出られないことに関しても何もコメントが無くて(という訳で実際表彰状を受け取られた方は10名)。
一体これはどうしたことなのか、未だ訳がわかっておりません。
心配なんですけど…。


ともあれ、雀右衛門丈の不在を除き(除けるようなことでは無いんですが)式はつつがなく終了。
ここで30分の休憩。
入場時にチェックしたところ、西側売店などが通常通り開いていて、しかも先月で終了と聞いていた“茹で小豆”が出てる〜!ということで戴いたり(笑)。
そして開場時には、下手するとNHKのテレビクルーの方が多いんじゃないの?というくらい少なかったお客さんが続々と来られており(苦笑)。やはり真面目に(と言うか私の場合、せっかくだし、というのと「これも切符代のうち。」というのもあって最初から拝見することにしたんですけど)最初から来られた方は本当にわずかだったんですねぇ。私のいた3階席なんてもうガラガラもいいところでしたけど、この休憩後に来られた皆さんで二部は普通に席が埋まっていました。


そして二部の祝賀芸能。
最初は観世榮夫丈によるお能。葛西アナの説明によると、宝塚歌劇団とも古くからお付き合いがある観世榮夫丈、確か今日披露された『壽の舞』は去年宝塚が創立90周年だったとのことで、それを祝うために作られたものとか。花道スッポンよりせり上がりで登場、残念ながら演奏はテープで、舞台の作りも非常に簡素なものでしたが(と言うか、所作台(とお能でも言っていいのかしら?)以外、何もナシ)、“祝う”という主題が伝わるような舞でした。


次は文学座より(?)『女の一生』。
プロローグとエピローグを生で、その間に通常の本編を回想という形で杉村春子氏が演じた記録映画で一部ダイジェストというような形で見せて。名前くらいは知ってますが『女の一生』、うーん、映画部分も貴重なものであったのは十分にわかったものの、場内暗くされると眠気が(汗)。しかもどうも“生の舞台と映画の合体”というと、去年の俳優祭の『奈落』を思い出しまして(苦笑)。


その後は宝塚。やはりこちらを目的で来られた方が非常に多かったようで。*2
先月、大阪梅田芸術劇場で上演され、来月日生劇場で上演されるという『アーネスト・イン・ラブ』のダイジェスト版。しかし“ダイジェスト”と言うものの、これがかなりキャストがファンの方には美味しいものだったようです。
緞帳が上がると舞台中央後ろに鏡があり…「十二夜?」と思った歌舞伎目当ての方もいたかと…(笑)。
宝塚を拝見するのは全くの初めて、30分ほどの上演で最後の方はなかなか面白いかも、と思いましたが、正直「タモリの気持ちがわかった気がする…。」というところもアリ(汗)。*3
最後はしっかり、「来月公演があります。」というシメ。*4


そして15分の休憩を挟み、『座談会』。ジェームズ三木氏をホストに、森光子氏、池内順子氏、嵐圭史氏が多分歌舞伎で使われる隅田川の背景幕を背にお話。
一番最初にお話を振られた森光子氏の声が、マイクから遠かったせいなのか音響さんの調整が甘かったのか聞き取り辛かったところ、一階席前方から「聞こえない。」という女性の声がしてびっくり…。その後はつつがなく穏やかにお話が進み。
「嫌なお客は?」というお題に“遅刻してくる人”というのには同感。*5あと、森光子氏が先代勘三郎丈の「大三元!」の話をされ、一部で大ウケ<てか私自身がウケてました(汗)。
それから恋について…という明確なお題にはなっていなかったと思うんですが、やはり森光子氏の「20年越しの恋です。」という発言は素敵でしたねー。勿論お相手はヒガシとのことで(笑)。


次は10分の休憩の後、新派による『滝の白糸』より“水芸の場”。
歌舞伎よろしく大向こうがかかったのですが、これが屋号などが無いので(無いんですよね?)各役者さんの苗字で、なんかすごく不思議な感じが。
そしてここでまたワタクシ変な感想を…。
「和な拵え(?)をした女性が舞台に並んでいるのってなんか凄い違和感。」
どうなんだコレ(汗)。すっかり歌舞伎に染まってるってことですかねぇ…。


と、ここまでで既に時刻は17:00近く。20分の休憩を挟み、いよいよ最後の歌舞伎舞踊
まずは『時雨西行』。
パンフレットに『三社祭』は素踊り、との記述があったのと、通常の公演でない舞踊ということでこれも素踊りか…?と思ったのですが、やはり福助丈のお役が遊女で普賢菩薩、ということからか、きちんと拵えありでした。
西行法師の橋之助丈の一人での踊りがしばらくあり、時雨に降られたところで江口の君の福助丈が登場。余り見慣れない形の鬘のせいなのか、うーん、なんか似合わない(泣)。でも衣装が質素ながらも美しく。所作も非常にわかりやすくて綺麗。懐紙を使った仕種に見蕩れる。
途中、橋之助丈演ずる西行法師が数珠を手に目を閉じると、目の前の江口の君が普賢菩薩に見えるというところ、特にそういった所作があった訳では無かったけれども(でも福助丈の姿勢が菩薩様のようになってたかな)、唄を聞き取れば、あぁそういうところなんだ、という“私にもわかる”ものでした(汗)。*6
しかしなぁ…数珠を手にする橋之助丈を見て
「その数珠引き千切ったら破戒僧。」
って、まだ先々月引きずっている自分がいい加減馬鹿過ぎ(泣)。
でも本当に僧形の橋之助丈、素敵でした。遊女であり菩薩である福助丈も然り。てか結局ほとんどオペグラで観てたんですけどね、いつもの如くワタクシ…。
派手な動きや仕草は無かったけれど、静謐と言うかストイックで、素敵な一幕でした。*7


そして締めくくり。勘三郎丈と三津五郎丈が文字通り“がっぷり四つに組んだ”『三社祭』。意外にもお二人とも初めて踊られるという解説があった気がするんですが…<曖昧(汗)。
幕が開くと大ゼリが下りていて、あれが上がってくると…と思っただけで異様にドキドキ。で、いよいよ上がってきて、お二人の後姿が見えただけで、緊張感というか、もうなんだか舞い上がってる自分が(笑)。
黒でそれぞれの定紋が入った白の着物に、生成りと言うか極薄い茶の袴という揃いの衣装。
いやもうなんか素踊りって凄い。
本来の“素踊り”という意味は特に衣装を着けずに踊るということなんだけれど、その“特に衣装を着けない”という形が、踊り手の所謂“素”の部分を引き出すんだと思うんですよね。衣装などに目が行かない分、本当に踊りの実力勝負ということになるかと。*8
そんな感じで、どうこう感想なんぞ書けない位、と言うか、書くのも無意味という迫力。単に私の文章力が追い付かないだけ、とも言いますが…(泣)。*9
あのお二人の舞踊に関しての息の合いっぷりは、ただただお見事としか言いようが無い。それでいて静かに火花が散っているという印象も強く受け。
全て終わって帰る際に、後ろの席にいた恐らくヅカファンと思われる方が
「全然わかんなかった。」
と話していたのを耳にしたのですが。
あのお二人が同じ時代に生まれてああして組まれるということ、更にそれを拝見出来て、そしてそれを稚拙ながらも素晴らしい、と思えるということはとても幸せなことだなとつくづく感じました。
安っぽい言葉になってしまうけれども、文字通り「いいもの見せて戴きました。」という…ね。


3階席5000円、本当に最後二演目でお釣りが十二分に来るくらい、堪能させて戴きました。
お誘い下さった某さんに感謝。

*1:正確には歌舞伎だけではなかったのですけど、カテゴリが他に無いので歌舞伎としております。

*2:ここ数日、当ブログのアクセスログにも“演劇人祭”とタカラジェンヌの方のお名前の組み合わせ、というのが何件かあり。

*3:タモリが苦手なのは正確にはミュージカルですが。どうもいきなり歌われちゃう、ってのが気恥ずかしいと言うかね(苦笑)。

*4:ちなみにこの後、葛西アナのお話によると、ジェンヌの皆さんは殊の外今回の出演を喜ばれていたとのこと。花道がある、というのに感激されていたとか。そして裏で撮影大会状態だったというお話(笑)。あ、そう言えばジェンヌの方々の“楽屋のれん”にはフリルが付いている、という話もあり。そうなると“のれん”ではなく“カーテン”なのでは…という疑問も沸いたりしたんですが、それはまぁそれとして(笑)。

*5:まぁこればっかりは色々と理由があっての上のこともあったりするので一概に言い切れませんが…それこそ今日、電車が遅れたことにより、私だってこの仲間入りをしていたかも知れないですし。

*6:ちなみに先日オーダーした『時雨西行・橋弁慶』のCD、紆余曲折の果てにようやく本日到着…帰宅したら届いてました(苦笑)。予想通り復習・予習になりましたなぁ。まだ聴いてないんですけどね。

*7:ストイックというのは当然ですけどね、主題が主題ですから…。

*8:まぁ今回の場合、その“素”の衣装も十二分に魅力となっていたとも思いますが。

*9:ちなみに勘三郎丈の後見は小山三丈。出てこられたところで「きゃー、小山三さーん!」とバタバタしたのは内緒…って(苦笑)。