基準が狂ってる。
歌舞伎座メールマガジンが届きまして、十一月の演目を見て
「顔見世なのに華が無いなぁ。」
と思ったのです。
…でもこれ明らかに変。ちょこちょことメールのやり取りをしていたのですが、“華が無い”発言直後に、いや待てよと。そんなこた無いだろ、と。
【昼の部】(午前11時開演)
一、『息子』(むすこ)
金次郎 染五郎
捕吏 信二郎
火の番の老爺 歌 六
二、一谷嫩軍記
『熊谷陣屋』(くまがいじんや)
熊谷直実 仁左衛門
源義経 梅 玉
藤の方 秀太郎
堤軍次 愛之助
梶原景高 錦 吾
弥陀六 左團次
相模 雀右衛門
三、『雨の五郎』(あめのごろう)
『うかれ坊主』(うかれぼうず)
『雨の五郎』
曽我五郎時致 吉右衛門
『うかれ坊主』
願人坊主 富十郎
四、『人情噺文七元結』(にんじょうばなしぶんしちもっとい)
左官長兵衛 幸四郎
女房お兼 鐵之助
手代文七 染五郎
娘お久 宗之助
家主甚八 幸右衛門
手代藤助 錦 吾
鳶頭伊兵衛 友右衛門
和泉屋清兵衛 段四郎
角海老女房お駒 秀太郎
【夜の部】(午後4時30分開演)
一、嬢景清八嶋日記
『日向嶋景清』(ひにむかうしまのかげきよ)
悪七兵衛景清 吉右衛門
肝煎佐治太夫 歌 昇
里人実は 土屋郡内 染五郎
里人実は 天野四郎 信二郎
娘糸滝 芝 雀
二、 『鞍馬山誉鷹』(くらまやまほまれのわかたか)
中村大改め初代中村鷹之資披露狂言
牛若丸 大改め 鷹之資
鷹匠 富十郎
平忠度 仁左衛門
喜三太 梅 玉
蓮忍阿闍梨 吉右衛門
常盤御前 雀右衛門
三、 『連獅子』(れんじし)
狂言師右近後に親獅子の精 幸四郎
狂言師左近後に仔獅子の精 染五郎
法華の僧蓮念 玉太郎
浄土の僧遍念 信二郎
四、 おさん 茂兵衛
『大経師昔暦』(だいきょうじむかしごよみ)
茂兵衛 梅 玉
おさん 時 蔵
女中お玉 梅 枝
母お久 歌 江
番頭助右衛門 歌 六
大経師以春 段四郎
これだけの内容と顔ぶれに、華が無いって感覚はどうなのよと。
襲名や納涼などで(コクーンもか)浮かれて感覚が麻痺した、というところでしょうか。
まぁ元々ミーハーなんで、その時点で既に普通とずれているということなんだと思うんですけど。
で、各演目、色々調べたこととかちょっとメモというか、つらつらと。
昼の部
『息子』
小品ながらちょっと朝一で泣かされるかも?といった内容みたい。*1
『熊谷陣屋』
意外と私、未見でして。*2今回、芝翫型だという噂を聞いたのですが、果たして? 仁左衛門丈の赤っ面というのが想像付かないのだけど…。
『雨の五郎』・『浮かれ坊主』
『雨の五郎』は南座で獅童丈が踊られたばかりですね。あと他にも最近かかった気が…。『浮かれ坊主』は一昨年の顔見世にもかかりましたよぅ…菊五郎丈で観ました。今回の富十郎丈というのは、一種“王道”のようですが。*3
『人情話文七元結』
これ初めて観たのが中村座で、あれで“確定”された感あり。その後、今年の一月の演舞場すら観ていないので、今回二度目になるんですが。幸四郎丈が長兵衛っていうのが正直想像出来ません(汗)。それこそ一月歌舞伎座の『魚屋宗五郎』の路線(?)かな、という感じでしょうか。
【夜の部】
『日向嶋景清』
演目名に見覚えアリ、と検索してみたら、やはり今年のこんぴらでかかった、松貫四こと吉右衛門丈書下ろし。*4早くも歌舞伎座に。
『鞍馬山誉鷹』
鷹之資襲名狂言。現在発表されている脇の方々を拝見しただけでも超豪華。*5そもそも大ちゃんくらいの歳で襲名、というのは珍しいことと思うんですが(下手するとこのくらいで初舞台、だもんね)主役で一演目、ということ自体、確かにびっくりですわ。襲名だから、と考えると例外的ではないけど。でもふと思い出したのが中村屋の『桃太郎』。勘九郎丈も、勘太郎・七之助丈も初舞台で主役で一演目、ですよね。…他の方でこういう形で初舞台という方はいらしたかな、とか。
『連獅子』
単純に連獅子とか“獅子もの”(正確に言うなら“石橋もの”か)が好きなので楽しみ。
『大経師昔暦』
不義密通モノ…(汗)。と言うか、行き違いでそうなってしまった、という感じみたいで。悲劇ですね。で、ふと福助丈の写真集に“三大姦通もの”という言葉があったことを思い出し、検索してみましたら、見事にこれが入っておりました。これで締め、というのも何とも後味悪げですが、*6これもまた歌舞伎らしい、というところでしょうか。最近、めでたしめでたし〜、で小屋を後にするということが多かったですものね。
という、こんな短文に二時間近くもかけてる自分が信じられん…。
寝過ぎなのか、昨日出掛けて疲れてたところに酒なんて呑んだのがいかんのか、はたまた天候不順なのが影響しているのか。*7言葉が全く出てこないのに参る。
ともあれ取り敢えず、十一月は先日も書いたように演舞場と国立があって、歌舞伎座の内容が気になっているところだったのだけれど、見通しが立ったので何よりです。
あとは日程の調整を考えないとねー。まだまだ先、と思っていても、切符の予約日ってもんは一月切ってる訳だから。
ちなみに今回のエントリーは、web上と『歌舞伎手帖』を参考にしました。
正直、劇評は承服しかねるところが多々あったりしましてアレなんですが、渡辺保氏。
この本は劇評でもないし(苦笑)、資料としてはとてもオススメです。と、今更言うまでも無く、歌舞伎好きの方ならご存知の本と思いますが。重宝してます、ほぼ毎月。
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*1:但し、作者(小山内薫氏)は喜劇のつもりで書いた、ということです。
*2:多分(汗)。『盛綱陣屋』とよく間違えるけど(失笑)観てないです。今回観たら間違えなくなるかしら。
*3:私が持っている歌舞伎関係の本に載っている『浮かれ坊主』の写真は、漏れなく富十郎丈だという印象があるんですが。
*4:ちなみに“松貫四”とは、当代吉右衛門丈のご先祖にあたる実在した人物とのこと。
*5:とか言いつつ、実は最初仁左さんに気付かなかった私(汗)。
*6:全幕上演されれば、話の収拾が付いて終わる形なのだけれど、通常の上演形態だと悲劇性が高まったところで終わるらしい。
*7:選挙にも今回は行かなかったしなぁ。だらだら…。