コクーン歌舞伎・東海道四谷怪談/南番



昨日ちょっとだけエントリーしましたが、*1覚えている限りのことを追加しておこうかと。
まだ始まったばかりで1ヶ月以上公演が残ってますので、久々に“続きを読む”を使いましょうか。


◆2階BR列一桁台


中に入ると巨大な提灯が客席前方上方に。
引き幕は定式幕。間口に比べると天井までの高さがある分、下までキッチリ閉まっているとかなりの威圧感めいたものが。*2


幕が開くとそこは浅草観音。後ろには巨大な仁王像。
下手側袖しか見えませんでしたが、上手側にもあったのでしょうか、店というか小屋がけのような枠状のもの。2列2段の枠のそれぞれに薄手の布が引いてあり、上2つは使っていなかったと記憶していますが、下2つは役者さんの出入に使われていました。
で…実はもうこの空間で
見世物小屋みたいだ。」
という印象を持ってしまった私、*3一気に去年の六月に意識が飛んでしまいました…。
その後も盆の代わりに舞台装置を横に移動させるといったところや、お岩様が泣く子をあやす「誰がよ誰がよ。」という言葉を耳にすると、もうダメでした(失笑)。*4
「あの坊ちゃんは去年私がお預かりした坊ちゃんと一緒なのかしら?」
とかもう色々邪念入りまくり…。
そして更に橋之助丈の伊右衛門がねぇ、もうそりゃあ“悪の華”って感じで。
去年の権助思い出しちゃうし、いい加減にしろ、っていう。


で、えーと。演目としては一応一昨年の納涼で観ているんですよね。南番はあの時とほとんど変わらないというところでしょう。
ただかなり記憶が欠落しているのだろうな、という感じで、こんなトコあったっけか?というのもかなりあったのですが。一昨年は一日通し観劇でぐったりきていて、更にやたらと「ここで笑うか?」と思うことが多く、そこらへんに気を取られていたという記憶の方が多い気も…。
今回も、伊右衛門が金になるものをよこせ、というくだりで蚊帳まで奪い取っていくのに縋り付くお岩様で笑いが起きたりしていましたが、*5伊藤家に話をしに、と身繕いをする際に鉄漿の用意をしている際などは、客席ほとんど息を呑む、という感じで落ち着いて観られました。


前述の通り納涼の観劇時は疲弊しまくっていたので、芝居に入り込むという自分自身の状況も良くなかったため、感性が低下していたのだと思うのですが。
コクーンくらいの小屋でやるのがいいんじゃないかなぁ、と思いました、この作品。
舞台装置など特に今回の公演に合わせたものであるので、よりそういった形になっているとは思いますが。
今回、とても芝居に入りやすかったんです。
偶然なんですが、納涼の時も3階の東という今回とほぼ同じ条件で観たのですが。物理的に歌舞伎座の3階とコクーンの2階と、舞台までの距離が全く違うというのがありますけれど、どちらかというと今回の方が舞台自体を見渡すという点では見辛かったはずで。*6
でも伊右衛門廊宅の場でのお岩様、最初に出てきた時から、迫力というのとはちょっと違いますね…夫に疎まれているという哀しさを元とした様々な感情が顕になっていて、あっという間にその“気”に呑み込まれてしまいました。
何度も背筋がぞっとしたんですが、それは恐ろしさではなく哀しみがそうさせたものであったと思っています。


でー。あと覚え書き的。
本水が出てきた砂村隠亡堀の場、上から見ていると水の中の様子が見えたのが面白かったです。途中から泡がぼこぼこ上がってきたので、演出なんだと思い込んでいたら実は釣り糸に櫛を付けるために潜水していたダイバーさん(?)の息だったようで(笑)。手がぼーっと出てきたので「出るぞ…。」と思っていたら、それも仕掛けのためだったようで、何事も無かったりとか(爆)。ちなみに戸板返しで出てくる勘三郎丈は、本当に下から板に付いて上がってきていましたが…はける時は裏(土手下)に入っていたので(お弓が伊右衛門に蹴落とされた後にはける口と同じところから裏に)戸板に付くのも土手下からかな? 衣装やら何やら付けて横から移動してというのはいくらなんでも無理ですもんねぇ。多分あの水、土手下中央付近は仕掛けのためにかなり深くなっているようでしたが、その他はそうでもなかったような? 捕り手が落ちた時ってどんな感じでしたっけか…(汗)。てか隠亡堀と大詰の間は転換入ったんですよね。舞台番に早替わりした笹野さんと七之助くんの解説があって。わざわざ着替えた弥十郎丈と扇雀丈まで出てきて(笑)。よく聞き取れなかったのだけれど、弥十郎丈は「早くパルコ行かないと終わっちゃう。」とか何とか。そして扇雀丈は「最初しか出番が無いので…。」と。で、「来年中村座NY公演やります。」というお話もあり。あの時、定式幕が何故か下までぴったり引かれていなかったのが気になったんですが…というのは既に下が濡れていて幕下ろしてしまうと後が大変、だったからなんでしょうか。とにかく水が見えていて、特に何をしているという風には見えなかったんですが。実はあの時、深さを変えていたりしていたんでしょうかねぇ。大詰で捕り手が落ちて下手にはける時、横泳ぎにも見えましたし、手を着いて移動しているようにも見えたのですが。うーん? でもとにかく大詰の水しぶきったら凄かったですねぇ(笑)。舞台番さんの御指導が無ければ皆様大変なことになってましたね。合羽の上にシートまで必要とは。でも私がかぶりつきの取れた北番では、あの場は無いんですよね。残念。とかいうのも邪ですが…。


あと、提灯抜けは派手になってますが、*7仏壇返しがありませんでしたねぇ。他に色々派手なことが多いのでまぁいいか、という気もしますが、ちょっと残念な気も。どうせやるなら…といったところですね。
でもあの場。あちこちで脅かしやら何やらあって場内エライ事になりますが(笑)。あの仕掛けがそのままなら、楽日、ワタクシ死ぬかも知れません。ああいうものって普通、予定調和とか思ってしまうとつまらないし、忘れていた方が楽しいに決まっているものですが、あればっかりは覚えていないと危険。とか言って肩透かし食らうかも知れないけど(苦笑)。そしてそうなったら物凄く悔しいと思うだろうけど(失笑)。


カーテンコールは2回。…あれ、3回だっけか?(爆)
とにかく幕が閉まってすぐに一度、そしてお客さんが半分くらい移動してしまっても拍手鳴り止まず(ワタクシもそのうちの一人)もう一度、というのは覚えているんですが。大詰前の解説時(笑)の改まった姿になっていた弥十郎丈と扇雀丈が、この時には直助とお袖に戻っていたのがびっくりでした。…とここでパンフレット見て初めて気付きました…。大詰前の弥十郎丈と扇雀丈って、それぞれ“役者”という役柄になっていたのね(汗)。


その他舞台以外のこと。
パンフレット1500円、薄い。厚さで判断するものでは無いけれど…内容的にもちょっと物足りないな。但し、各役者さんの素顔写真が素敵。「弥十郎さんてば“ちょい悪オヤジ”?」(笑)って感じとか。新悟くん、よく見ると学ラン姿というのにもびっくりです。七之助くんはすごいアップだしね。
携帯ストラップ、300円だったかな? …要らない…。もう一杯で付けられないとかいう以前の問題で。あれちょっとねぇ、どうにかならんのか、という気が。
Tシャツは2500円。2種類、デザイン同じで色違いらしいけどちょっとハッキリわからず。見本がちゃんと出てなかったんで。これは買うかな?
クリアファイルは…300円? チラシやパンフレットと同じデザイン。目立ちますよねー、これは。でも“そりゃどうよ?”とも思うけれど、数枚買っていっそ仕事に使いたい気もする私。私物と会社のものというのが明確に区別できるように、という観点に立つと、あれくらい派手な方が分かりやすくて良いので。


まず勘三郎丈の三役が素晴らしかったというのが第一、なんですが。
橋之助丈にやられ(失笑)、果ては「去年は福助さんが…。」という思いにまで突っ走ってしまったワタクシ。
来週は北番、そして来月再び南・北の観劇を致します。
『桜姫』のような“進化”はほぼ無いとは思いますが、さてどうなりますことやら。

*1:帰宅途中にメールでひとこと更新、更に先ほど写真等追加。

*2:そして流石に中村座のではないのねー、とか思ったり。

*3:観音様の境内の様子なので、その印象はそう間違っていないと思うのですけど。

*4:『桜姫』で実は自分の子であるとは知らない赤ん坊をあやす風鈴お姫の、あの面倒臭そうな「誰がよ、誰がよ〜。」という台詞まわしと刀を使った仕草がよみがえってしまって。

*5:これについてはパンフレットでラサール石井氏が“怖さに裏打ちされた笑い”といったようなことを書かれていて、確かにそういうのもあるな、と思ったんですが。でもあの笑いはどうしても単なる“目の前の現象のみを捉えた笑い”としか思えなかった…。

*6:実は…昨日は隣の男性が物凄く乗り出して観てましてね…。何度も乗り出さないで下さい、と言おうと思いながら機会を逃し続け、終いには言おうと思うこと自体が面倒になってしまったという(汗)。最後の方は隣の方も乗り出して観ること自体に疲れてしまったようで、体勢引き気味になってましたし(苦笑)。

*7:通常は上に抜けて裏へ、ですよね、お岩様。今回は舞台上手まで宙乗り状態ではけてましたから。納涼の時もそうでしたっけか…?(汗)