劇評

歌舞伎:秀山祭九月大歌舞伎(歌舞伎座
◇幸、吉の「寺子屋」に見ごたえ
初代吉右衛門の生誕120年記念。大顔合わせの舞台と花形の活躍。充実した興行となった。
昼の最初が「車引」。荒事らしい勢いのある松緑の梅王、大きさのある染五郎の松王、柔らかさのある亀治郎の桜丸。3人の持ち味が出た。段四郎の時平、種太郎の杉王丸もいい。続いて「引窓」。吉右衛門の南与兵衛、富十郎の長五郎。母お幸(吉之丞)の実子と継子への愛と義理立てしあう息子たち。3人のセリフ術が、物語を鮮やかに浮かび上がらせる。芝雀のお早も好演。次が雀右衛門の小町、梅玉の業平の品格ある「業平小町」と染五郎の表現力に富む「文屋」。最後が「寺子屋」。情感豊かな幸四郎の松王と活殺自在のセリフの吉右衛門の源蔵。時に攻め、時に受けての緊迫したやりとりを芝翫の千代、魁春の戸浪、段四郎の玄蕃、福助の園生の前の顔ぞろえが支える見ごたえある一幕。
  〜後略〜

毎日新聞 2006年9月14日 東京夕刊

写真は『寺子屋』より源蔵(吉右衛門)、松王丸(幸四郎)。


嗚呼もう一度観たいわ、今月の『寺子屋』…。せめて地上波で放送してくれないかしら<どこが“せめて”なのか今一つ不明。*1

*1:地上波は誰でも視られるものですからね。この場合は歌舞伎チャンネルとかBSとかいうのが“せめて”を受けた妥当な表現かと。