劇評二題

歌舞伎:元禄忠臣蔵(第一部)(国立大劇場) 内蔵助、徳兵衛のやりとりに見応え
新歌舞伎の傑作である真山青果長編戯曲の3カ月連続上演の皮切り公演。真山美保演出、織田紘二補綴(ほてつ)・演出。
浅野内匠頭梅玉)が吉良上野介に刃傷に及び、切腹になるまでの「江戸城の刃傷」、国もとの赤穂に急を知らせる使者が赴く「第二の使者」、大石内蔵助吉右衛門)が家臣の動揺を静める「最後の大評定」の上演。
  〜後略〜
毎日新聞 2006年10月19日 東京夕刊

写真は『最後の大評定』赤穂城外往還より内蔵助(吉右衛門)と徳兵衛(富十郎

歌舞伎:芸術祭十月大歌舞伎(歌舞伎座) すごみある幸四郎初役の新三
  〜中略〜
夜の最初が「忠臣蔵五、六段目」。仁左衛門の勘平に次々と不運に見舞われる男の哀れさが漂う。誤って殺したのがしゅうとではなかったと知った際の安堵(あんど)の表情から人の良さがにじむ。菊之助のお軽は、夫への強い愛がうかがえ、海老蔵の定九郎が好演。魁春のお才、家橘のおかや。
続いて「髪結新三」。幸四郎初役の新三は、すごみがあり、永代橋で忠七(門之助)を打ち据えるところなど、きっぱりとしていい。おもしろいのが「新三内」。弥太五郎源七(段四郎)をやり込めるが、家主長兵衛(弥十郎)にはとっちめられる。段四郎が落ち目の親分の悲哀を、弥十郎の長兵衛がしたたかさを出し、幸四郎との、間のいいやりとりで盛り上がる。市蔵の勝奴が秀逸。永代のかどわかしにスピード感があり、新三内での切れ味は鋭い。高麗蔵、門之助、吉之丞、錦吾が好演。26日まで。
毎日新聞 2006年10月19日 東京夕刊

写真は『髪結新三』元の新三内の場より新三(幸四郎)、勝奴(市蔵)、長兵衛(弥十郎