劇評

歌舞伎:仮名手本忠臣蔵歌舞伎座) 情漂う幸四郎菊五郎のやりとり
仮名手本忠臣蔵」の通し上演。昼の部が「大序」から「落人」まで。夜の部が「五段目」から「討ち入り」まで。
富十郎の師直、菊五郎の判官、吉右衛門の若狭之助の3者の顔合わせが良く、拮抗(きっこう)した演技を見せるため「大序」での師直と若狭、「松の間」での師直と判官が二重写しの構図になっていることがよく分かる。師直の程よい色気と憎らしさ、判官の品位とはかなさ、若狭の直情な若さが見もの。魁春の顔世にしっとりとした色気がある。幸太郎が好助演。
昼は幸四郎の由良之助。「切腹」の判官とのやりとりに主従を超えた情が漂う。諸士の面々に緊迫した空気が見えるのがいい。「落人」は梅玉の勘平、時蔵のお軽。憂いに満ちた勘平と好いた男との道行にうれしげなお軽だ。翫雀の伴内。
  〜後略〜
毎日新聞 2007年2月8日 東京夕刊