仁左衛門丈インタビュー

歌舞伎:仁左衛門がいがみの権太役−3月、東京・歌舞伎座義経千本桜」
◇粋ではない大和のならず者風
3月の東京・歌舞伎座で通し上演されている「義経千本桜」夜の部で、片岡仁左衛門がいがみの権太を演じている。東京型のように粋ではない、大和のならず者風の権太だ。
権太はすし屋の主人、弥左衛門の息子だが、身を持ち崩し、家を出ている。弥左衛門は平維盛(弥助)を使用人に仕立ててかくまっていた。維盛詮議(せんぎ)に来た梶原景時に、権太は維盛の首と妻、若葉内侍、息子、六代を差し出し、怒った弥左衛門に刺される。だが内侍親子と見えたのは、身替わりの権太の妻、小せんと息子の善太だった。
「権太は、しっかりせず、仕事も好きではありませんでしたが悪人ではない。小せんを見初めて入れあげたあげくに家の金を使い込んだ。良く取れば、愛情からすべてが始まっています。父への愛、女房、子への愛。家族愛が描かれています」
女房、子が梶原一党に連れ去られる時も、東京式の権太は、胸の内をあらわに見せないが、仁左衛門の関西式のやり方では、涙をぬぐう悲しみのそぶりなどをする。「演者によって違うのも歌舞伎の楽しみです」
  〜後略〜
毎日新聞 2007年3月5日 東京夕刊

写真はインタビュー時の仁左衛門