劇評

歌舞伎:義経千本桜(歌舞伎座) 場面ごとにめりはり利いた権太
義経千本桜」の通し上演。昼は「鳥居前」「渡海屋、大物浦」「吉野山」。幸四郎の知盛は花道の銀平での入りに風格が、知盛となってからの落ち入りには悲壮感が見える。坂田藤十郎典侍の局は世話女房から局への変わり目が見どころ。
  〜中略〜
 夜は「木の実、小金吾討死」「すし屋」「川連法眼館、奥庭」。仁左衛門の権太は大和のごろつき風の作り。「木の実」では妻の小せん(秀太郎)と息子への愛情をたっぷりと見せる。「すし屋」での母のお米(竹三郎)への甘え、梶原への虚勢など、場面ごとにめりはりが利き、人間、権太が鮮明に浮かびあがる。時蔵の弥助に色気と品があり、孝太郎のお里が、弥助への恋にうきうきとする田舎娘の風情を出した。秀太郎に前身を思わせる色香が感じられる。扇雀の小金吾にあわれさがあり、左團次、竹三郎が好演。東蔵の若葉内侍、我当の梶原。
  〜後略〜
毎日新聞 2007年3月15日 東京夕刊

写真は『すし屋』より弥左衛門(左團次)、お里(孝太郎)、権太(仁左衛門)、お米(竹三郎)。