『三人吉三』メモとか感想とか



初日の観劇から1週間以上経ってしまった訳ですが。
まずはweb上の記事をスクラップ。

最初の記事、写真のキャプションが間違ってるのがアレですが…。
ちなみにこの記者会見時に勘三郎丈がお召しになられている浴衣ですが、今朝NHKに笹野さんが出られていて稽古場風景がちょっと映った中で、福助丈が地色が白の同じ柄のものを着ていらっしゃいました。飽くまでも笹野さんを中心とした画でしたが、後ろで芝喜松丈と立ち回りのお稽古をされている福助丈のお姿がちらほら見えたり。*1
で、ここから先は初日の感想というか気付いたこととかメモ。ネタバレ注意。


◆6月7日観劇(平場席1桁台列・上手側通路脇)


色々気になったこともあったので、初演時のテレビ放送のDVDをさらっと見直してみました。*2それとの比較もしてみたり。話の流れとは無関係に、思い付いた順に書きます。

  • 幕開き直後の“亀蔵オンステージ”は今回の方が物凄く長い(笑)。てかホントに今回は“オンステージ”ですもんね。コネタとかいう次元じゃない。しかしあのネタが本当に面白いと思える人は観客のうちの何パーセントなのかという疑問も。私は面白かったですが(笑)。
  • お竹蔵裏の場の身ぐるみ脱いだ姿、前回は褌の下にパンツ着用(笑)。
  • 小山三丈の“サービスカット”(笑)はお約束らしい。初日にあまりのあられもない姿に女形さんとしては信じられないのでハプニングだと思ったんですけど、前回もおんなじことやってた…。
  • 前回は今回の芝喜松丈の役(おいぼ)の役が源左衛門丈(当時はまだ助五郎)だったんですね。芝喜松丈はえーと、伝吉内で白粉塗ったくってる方でした(白粉は今回みたいにてんこ盛りじゃありませんでしたね)。おはぜ、かな。おてふの方が獅童丈(長沼六郎との二役)。
  • 今回の方が吉祥院のお嬢とお坊の絡みがあっさりしている感じ。あっさりというのは違うか…同性愛っぽい感じがあんまりしなかったんですよね。で、後でパンフレット読んでみたら、福助丈が今回はそういう捉え方をしていない、というような意味合いに取れる発言をされていたのでなるほどな、とか。
  • 今回、お竹蔵裏で伝吉が数珠を切った後、伝吉の声のトーンが物凄く下がりました。単にそう思うからそう聞こえるのかな、と思ったんですが、しばらくその状態が続いた後、一気に声量が上がってちょっと聞き取り辛かった台詞が途端に聞き取り易くなったので気のせいではないのだなと。そしてあれがあって、お坊の怯えと取れる態度が現れるのだな、と。前回は普通の台詞回しで普通の展開と言うか“普通の歌舞伎の立ち回り”という感じでしたが。今回は伝吉の凄みが増して、それに気圧されて文字通り伝吉から見れば“若造”のお坊が怯むのだなという印象。ただちょっと終わってから気付いたんですけど、全体的にお坊が弱かった気がするんですが…単に個人的好みで他の二人(特に福助丈(笑))に目が行き過ぎたから、というだけなのかしら。
  • 怯むと言えば、先日もちょっと書きましたけど、今回の吉祥院の和尚の長台詞、凄かったです。上手側で観ていたので物理的にお嬢がかなり観辛いというのもあったからなのですが、お嬢観ていたつもりが和尚から目が離せなくなりましたからね。そして観劇後お友達と話した帰り道、思い返してみたら、確かにお嬢は引いてましたね…。お嬢と言うか、福助丈が、ですか。観辛かったのは、体が引いてきて体勢がだんだん低くなっていってしまっていたからなんじゃないかという記憶が蘇ってきました。勘三郎丈、途中から白熱する余り、完全に目が明後日の方向向いちゃってたように見えましたし…。ああいう形で役にのめり込んでいる勘三郎丈を観たのは初めてだった気がします。
  • 前回はおとせと十三郎が逆だったということに後になって気付いた私でしたが(苦笑)。とにかく今回、あの二人が物凄く良いのですよね。柳原での出会いのシーンなんてもう鳥肌立ちそうなくらい素敵。人が恋に落ちるときというのはこういうものなんだ、と思います。あと吉祥院で裏に行く間際の十三郎の「あにさん」という台詞が…。しかしDVDを観て初めて知ったのですけど、なんとこの台詞、前回は無かったんですね。好いた人と晴れて結ばれることになって、その人のお兄さんを初めて「あにさん」と呼べる嬉しさがありありと滲み出ていました。ただこれは最初で最後の呼び掛けなんですよね。そして更に観ている側としては、好いた人の兄というだけでなく、実は本当の兄であったという悲劇も含んでいる訳で。webの感想を拝見すると、あの二人がとても良いというのをお見掛けすることが多いのですが、特に七之助くんの方が良い、とするものばかりという印象。勿論勘太郎くんも素晴らしいということなんですけれど。私は特にこの台詞が今回の勘太郎くんの見どころじゃないか、と思います。
  • お嬢とお坊は“指あり白タイツ”着用なんですよねー(笑)。二役の橋之助丈は時間が無くて仕方が無いのかな、と思ったのですが、一役の福助丈もコレだったので、ちょっとえー、という感じだったんですけど。水に入らなくても濡れるから白粉取れちゃうのかしら、とか思っていたんですが、これは単純に地がすりの黒が汚れないようにということらしいです。水で白粉取れるなら、『夏祭』の団七徳兵衛とか、ひいては『四谷怪談』のお岩様の戸板返しなんてどうするんだって…。
  • 大川端のお嬢の衣装が実はあんまり好きじゃありません(汗)。あの地色がなんか中途半端で落ち着かないんですよね。あと“丸に封じ文”の紋も分かり辛くて、後々おとせの金を奪った者の手掛かりとして何度か出てくるものなんですが、暗い中あんなごちゃごちゃした柄の中にあるあの小さな紋が見えたのか、という突っ込みをしたくなる私だったりするんですけど…。
  • 幕開き早々に出てくるわんこは、野良犬と言うよりモロに忠犬な感じが(笑)。
  • 大詰は舞台上の上手下手をギリギリまで開放。それまで家並みに紛れていた下座は下手側の客席脇へ移動。ツケ打ちは始めから下座が移動する位置の向かい、上手側に。すぐ横の席だと音がちょっと辛いのではないかという気がします。そして下手側からは客席を突っ切って役者さんが出ることがありますが(B列だったみたい)*3、上手側からは何故かナシ。お嬢だけは前回と同様、大川端であの振袖持ち上げつつ強引に客席通ってますが(笑)(D列くらい?)。もし通るつもりのところに大荷物とか置いてあったらやっぱり止めちゃったり列変えたりするもんでしょうかね…。
  • 通路際の席だったので、お嬢が通る時はちょっと緊張して体を引いたので触れなかったですけど、芝喜松丈は着物が手に触れました。大詰では一瞬、捕り手の中にいらっしゃるはずの芝喜松丈と芝のぶちゃんを本気で探してしまいました…。カーテンコールでは中央に芝喜松丈と芝のぶちゃんで、何気に目立ちます(笑)。
  • 福助丈、『桜姫』の時には何か良い香りが漂いましたが、今回は何か香りがしている気がするのだけれどハッキリと感じる訳でなく…。気のせいだったのか何なのか、未だに分からず。
  • 大詰の妊婦や危篤の親父さんは前回はナシ。あと今回気になったのは、お嬢が被っていた筵。雪が積もっているというつもりなんでしょうが、白スプレーが吹き付けてあるんですけど…いかにも“スプレー吹き付けました”というように線状にうねっと白い塗料が付いてるのってちょっと興醒め。あれ要らないと思うんだけどな。*4
  • 話題の椎名林檎嬢の音楽。お芝居には合っているけど、個人的にはちょっとという感じがしてしまいました。劇中のギターのディストーション音とか、ひいては『四谷怪談』の北番で多用された楽器とかもあんまり、と思っている私なので、多分ここらへんは好みの問題なんだと思います。ただ、大詰の途中、うっすらと彼女の声が聞こえてきた時には鳥肌が立ちました。…やっぱり頭固いんだよね私って。
  • 普段、女形さんではまず有り得ない見得やら何やらがある*5お嬢というお役なので、拝見しているこちらとしても新鮮だったり色々面白いところもあり。お坊の橋之助丈と一緒のところでの見得なんかは、あーホントそっくりだなーとか(笑)。*6で、大詰の大立ち回りでは暴れまくっていたので「あー、発散してらっしゃるー。」とか思って最初は観ていました。が。ぱっと止まった時に顔が見えたら目が完全にイッてらしたので背筋がぞっとしました。後はもう引き込まれたまま幕。最後刺し違えるところでは薄ら笑いを浮かべてらしたし…。『桜姫』の時もそうでしたけど、カーテンコールでも入り込んだままという表情でいらしたので、3週間の公演大丈夫なのかしら、と要らぬ心配などしてしまったり。



こんなところかな。
前回との比較は飽くまでもDVDとの比較であり、画質もあんまり良くないし、そもそも生の舞台とは全く違うものだと思うので意味のあるものかどうかは激しく疑問ですが、個人的印象ですので。悪しからず。あれから何度か回を重ねて、変わったところとかもあるでしょうしね。
再見が楽しみです<あと数時間後ですが(笑)。


*1:コクーンはオープニングに上演中の画が少しで、話は最後の5分くらいでしたが、なかなか良いものが拝見出来たなと思います。最後にお食事の買出しから戻ってこられたところなのか、コンビニ袋を提げた笹野さんとお湯が入ったカップラーメンを慎重に持って歩く七之助くん(笑)の2ショットなんかあったりして。

*2:DVDダビングしてくださったSさん、メール不着になってしまうのでこれご覧になっていて良かったら連絡下さい。メアド変更のお知らせとか無かったので、深追いするのも逆に失礼かと思うのですが…。

*3:『桜姫』の時はA列でした。

*4:ついでに。歌舞伎モバイルの福助丈インタビューで大詰のお嬢の写真がupされてますが。「わーい」って落として開いてみたら凄まじくボケボケの写真で唖然。あんな写真上げるなんて考えられないんですが。「もしかして再upされてる?」って今改めて落としてみた私だったり(苦笑)。

*5:『切られお富』とか、一部そういう感じのものがある演目もありますが。

*6:ちなみにパンフレット、開演前にざっくり眺めていて「あー、はっしーね。」と思った写真が実は福助丈で(個人ページ最初のアップの写真)びっくりした。