『三人吉三』再見



昨日色々と書いたばかりですが。続けて観た訳ではありませんよ(笑)。
取り敢えずまたネタバレ満載ですから注意、と予告。


◆6月16日観劇・昼の部 2階BL列


前回観劇時の感想はこちら → 『三人吉三』メモとか感想とか - くだま記


またも順不同で列挙。

  • もうコクーン入口近くにパネルが出てました。吉祥院の和尚の長台詞のところを横から写したものと、お坊がお嬢に膝枕されているところ。*1他にもう1枚くらいあったような…? あとふと昨日思い付いて気になっていたんですけど、やっぱり今回入口前に幟が立ってない。何故かしら寂しいわ。去年のそのままというのはダメだったのかしら。あ、福助丈のが無いか…。*2
  • 幕開きに出てきた犬、前回より薄汚れた感じに見えました。あと伝吉内で確かおとせが九兵衛と帰ってくる時にも舞台上手を横切ってましたね。この後もっと出番が増えるかも?
  • 場内は土曜だというのに平日の歌舞伎座並みの平均年齢の高さ。というのはちょっと大げさですけど、何故か20代以下と見受けられるような方が皆無に等しい。皆さん夜の部にお出まし? そして大向こうさんがゼロ…。確かに都内で三座かかっているのでお忙しいんでしょうが、何故こんなことに。しかし意外と歌舞伎座なんかでも、土日より平日の方が大向こうが掛かる数多かったりするんですよね。大向こうさんも土日はお休みが多いのかしら。
  • 太郎右衛門の英語の台詞が初日に比べると短かった気がしましたが、実際のところはどうなんでしょうか。
  • 夜鷹の姐さん方にやり込められた太郎右衛門がご機嫌取りのために、かぶりつき中央付近に座っているお客さんのバッグを貢ごうとする(笑)。*3
  • 伝吉内の夜鷹同士の争いの際、とりなし役の芝喜松丈の台詞が随分と減ったような。台詞と言っても適当な相槌程度だったんですけど。あの雰囲気好きだったのに。残念。
  • 金を無くして放心状態で登場した十三郎、上手側通路から中央ブロックへ、更にそのまま横に抜けずに前へ前へと客席内を前進。最後にはかぶりつき中央で頭を抱えて座り込む。前回の観劇時には笑いが起きていたのだけれど、何がどうなっているのかは私のところからはわからなかったんですけど。舞台から遠く観辛い席でしたが、上から観られるというのはこの場に限らず違った発見が出来たりしたので良かったです。ただ前回ここまでやったかどうか記憶が既に定かでないんですが…。中央抜けて上手側通路、私の横を通ったような気がするんだけど<そんなことすら曖昧になってる(唖然)。
  • 伝吉内での恥らうおとせの動き、体の使い方が本当にお父さんにそっくりな七之助くん…。*4
  • 思わず観ているこちらも息をすることを忘れてしまう、柳原のおとせ十三郎の出会いの場。運命の恋ですね。本当に素晴らしいです、勘太郎くん、七之助くん。
  • 昨日の感想では椎名林檎嬢の最後の曲を含めて、音楽がちょっと、と書きましたが。今日は凄くしっくり来ました。何度鳥肌が立ったことか。大詰の立ち回りの最中にうっすら流れる林檎嬢の声は、全てを浄化させるもの、と言うより個人的には虚無そのものと言った印象が非常に強いんですが、とにかくぞくっとします。
  • 吉祥院でのお坊の独白時、今日は更に頬にも血糊がべったり。この血糊に関しては先日思ったことなんですが、幸四郎丈のが最初だったか獅童丈のだったか今ではもうすっかり曖昧なのですけど、『大物裏』の知盛の衣装に付いている血糊のうち、足元に近い部分のものがはっきり手の形になっていることに気付いて背筋が寒くなったのと同じ恐怖を感じました。滴る汗と混ざり、流れ落ちる様に更に迫力が加わっていました。
  • 大川端。初演時、更には先日よりお嬢の台詞がさらっとしてましたね。あれはあれで良いんですが、ちょっと個人的に以前の形は大袈裟過ぎると思っていたところがありました。余計な力みが削られてテンポも凄く速くなって、より鋭角的な感じになったのが良かったです。身顕しのところなんかわかりやすくはあるんだけれど、力が入り過ぎ、という感じがしたし。お坊に金のことを言われて「ぎくっ。」て台詞はなんだかいきなり説明っぽいんじゃないの、とかね。そしてこの場、おとせの「人が怖ぅございます」の台詞回しが素晴らしい。
  • 御竹蔵裏。初演時のDVDを観ていて、前回の感想として書いた他にもなんだか違う感じを受けたんですが。どなたかのblogでお坊の被っているものが頭巾から手ぬぐいに変わったというのを読んでなるほどと。そして更に今日観ていて、手ぬぐいに変えたことにより若造とかいう雰囲気を出そうとしているのかな、と感じました。真冬の凍て付くような空気の中では防寒のためというのもあるでしょうが、ああいう場での被り物とはどちらかと言うと他人に見られぬよう顔を隠す、という意味合いが強いのでしょう。それが手ぬぐいであれば誰でも持っているもの=庶民→若造という。でも頭巾だといかにも侍、という印象になりますからね。そんなことを思いながら観ていたら、益々お坊が怯えるのは自然に思えてきました。
  • 吉祥院のお嬢。この場も前回より更にさらっとした印象。と言うかもう同性愛っぽい感じというのがほとんど感じられず、ただただ寂しい心を抱えて生きてきた少年が、同じ寂しさを抱えていた人間と巡り合って心の安堵を得て死のうとしている、というように感じられました。恋愛感情云々という次元でなく、人と人同士の繋がりと言うか。こんな風に思いながら観ていればそう取れる、というだけなのかも知れませんが、台詞回しを変えるとこんなにも受け取り方が変化するのか、という驚きがありました。芝居って、と言うより“人って”と言ってもいいかな、とにかく奥が深いなと。
  • 2階BL列ということで、下手側1/4がほぼ見えず。更にお嬢の定位置は下手側なので表情が見られないことも多く、それだけが残念でなりませんでした。大詰なんてもうほとんど見えませんでしたもの…。でも初日以上に暴れ回っているという印象だけははっきりと。*5そしてカーテンコールでの福助丈、初日より更に深いところまで入ってしまっていたように見受けられ*6、要らぬ心配が益々募ってみたり…。だって今回昼の部だったんですもの。「今日はまだ夜の部があるんだってばー!」ってね(苦笑)。



今日は母親が一緒でして、大向こうが無かったことと、それに伴ってということにもなりますね、拍手とかもまばらだったので「あんまり盛り上がらなかったね。」なんて言ってたんですが。
私自身は確かに大向こうが掛からなかったのは寂しいと思いましたけど、拍手とかはあんまり今日のような雰囲気だと盛り上がり云々のバロメーターにはならないんじゃないかと感じました。
余りに深い人の闇に拍手はね…。

*1:写真に撮って早速待ち受けに(苦笑)。

*2:去年の様子はこんな感じ。 → おのれ成駒屋〜っ! - くだま記

*3:伝吉内の最初、同じくかぶりつき下手側にいると姐さん方に絡まれるかも。という情報はこちらから → コクーン歌舞伎「三人吉三」 : かぶりつき。 ……てぬぐいぶろ……/ウェブリブログ 実際今日チェックしてみたらおはぜ(多分)がお客さん見詰めて怪しい手つきをしてました(笑)。

*4:ああいうのもある程度型があるのでしょうが。『研辰』の辰次とか、あと『法界坊』でおくみの後ろで悶える法界坊の動きにそっくりでしたよ。

*5:けれど初日の方が通路まで飛び出してきた回数が多かったような。今日はお坊と和尚が1回ずつのみでした。

*6:ほとんど半泣きに見えましたが。何度も唇かみ締めてるし。