書評二題

今週の本棚・新刊:『和樂 9月号』 (小学館・1300円)
松嶋屋の当たり役から見る歌舞伎案内』が出色(撮影・篠山紀信、文・関容子)。仁左衛門芸談で、今月号は第2回『実盛物語』。「この芝居はあまり写実に追っていくと非常に暗くなる。観(み)終わって心温まるものに仕上げるために、わたしは全体的に明るくもっていきます」と語り出す。演出ノートのような知的な語り口。もちろん芸談もたっぷり。たとえば──
「坂東声の首とらば池の溜りで洗うてみよ」というのを義太夫で取らす(語らせる)人もいるけど、わたしはせりふで言ってます。「坂東」で足を割って「声の首とらば」は左手でまげを持って右手で首を掻(か)く仕草。次に扇子を開いて、それを首に見立てて池で洗う振り。洗ったら白髪が出てくるという心ですね。(才)
毎日新聞 2007年9月2日 東京朝刊

『実盛物語』のお写真が2枚あり、記事に気付いた次第。カラーでないのが残念ですが、それなら雑誌を買いなさい、ってことですかね(苦笑)。噂の連載第2回のご紹介です。
しかし確認してみましたら今回紹介されている号は先月出たもので、もうすぐ次号が出てしまうという…。書店での扱いが無く直接オーダーしなければならないものなので、むしろ発売直後でなくても手に入れ易いと言えるのかも知れません(在庫さえあれば)。でももう少し早く紹介しても良かったのでは、という気がしますね。*1
中村屋兄弟の記事も載っているそうで、ちょっと欲しいかも。
  参考:http://www.waraku-an.com/index2.html*2

和樂 2007年 09月号 [雑誌]

和樂 2007年 09月号 [雑誌]


今週の本棚・新刊:『菊五郎の色気』=長谷部浩・著 (文春新書・1000円)
尾上菊五郎は、円熟期のただ中にある歌舞伎俳優で、菊五郎劇団を率い、現代の歌舞伎界をリードする存在だ。著者は「色気のある役者である」と評する。
菊五郎の父は戦後を代表する女形の一人、七代目尾上梅幸梅幸は歌舞伎史に残る名優、六代目菊五郎の養子である。この本では初代から六代目までの菊五郎の歴史と七代目である当代の今日までの道程、そして近年の舞台が振り返られる。
つまりは「歌舞伎界屈指の名門に生まれた少年が、いかにしてその色気をまとい、すぐれた俳優になりとげるために舞台を積み上げてきたかをたどる、ひとりの俳優の個人史である」。女形から立ち役へと芸の幅を広げてきた菊五郎の魅力に触れることができる。(し)
毎日新聞 2007年9月2日 東京朝刊

こちらの記事はwebで前述の書評を探していて気付いた次第(汗)。
これもちょっと前に出たものですよね。書店で何度も見掛けているのですけど、なかなかタイミング合わず未購入…。表紙のオヤヂさまの弁天が題名通りの色っぽさ。「っとわや!」という大向こうさんの声が聞こえてきそうです。

菊五郎の色気 (文春新書)

菊五郎の色気 (文春新書)


*1:この書評欄、最新刊でないものの紹介の方が多いような編成なんで、そういう点では妥当なんですけど。

*2:申し訳ないけどトップのFlashがウザい。skip出来ないというのはデザイン等のこだわり故なんでしょうがいかにも不親切。たかが数秒がウザいとか言ってるヤツの方が問題ですか(苦笑)。ついでに『うぶ歌舞伎ファン「女形役者・福助贔屓』の更新、次回はいつなんでしょうか…というのもあり(遠い目)。