劇評

演劇:憑神新橋演舞場) 心の揺れ、優しさ描き出した橋之助
中村橋之助主演による浅田次郎作の同名小説の舞台化。G2脚本・演出。
幕末の江戸で婿入り先から追い出された別所彦四郎(橋之助)は実家で居候の身の上。たまたま出くわした寂れた祠(ほこら)に手を合わせるが、それこそ忌まわしい神々に取り付かれるという「憑神(つきがみ)」の社だった。
別所家は貧しい御家人ながらも、祖先が徳川家康の身代わりに立ったことを誇る由緒ある家柄。彦四郎も文武に優れるが、時代の変化でそれすらも評価されず、職務に精励すればするほどに存在自体が浮いたものになってしまう。
そのいかに生きるべきか思い悩む彦四郎の前に現れるのが貧乏神(升毅)、疫病神(コング桑田)、死神(鈴木杏)。3者が彦四郎の心中をあぶり出す仕掛けだ。
  〜後略〜
毎日新聞 2007年9月13日 東京夕刊

写真は彦四郎(橋之助)。