劇評

歌舞伎:十二月歌舞伎公演(国立劇場) 人のいい殿様演じ上げた吉右衛門
忠臣蔵の外伝物3作品が並んだ。「松浦の太鼓」以外の2作は久々の上演となる。
最初が「堀部彌兵衛(やへえ)」(宇野信夫作、松貫四(かんし)監修)。浅野家家臣、堀部弥兵衛吉右衛門)は、高田馬場のあだ討ちで見た中山安兵衛(歌昇)にほれ込んで養子とする。15年がたち、主君、内匠頭のあだ討ちの日となった。
時の流れが弥兵衛と妻、たね(吉之丞(きちのじょう))を老いさせ、幼い娘、さち(隼人)を安兵衛の妻となるにふさわしい大人とした。あだ討ちへ向かう前に老若2組の夫婦が別れを惜しむ姿に、対比と情が出た。
  〜後略〜
毎日新聞 2007年12月19日 東京夕刊

写真は『松浦の太鼓』より鎮信(吉右衛門)。