劇評

歌舞伎:「雷神不動北山桜」「新春浅草歌舞伎」(新橋演舞場、浅草公会堂)
◇5役を演じ魅力を出した海老蔵/形きれいに決めた亀治郎の雪姫
正月の東京では新橋演舞場と浅草公会堂の2劇場で、若手を中心にした歌舞伎公演が行われている。
新橋演舞場は「雷神(なるかみ)不動北山桜」の通し。「歌舞伎十八番」の「毛抜」「鳴神」「不動」が含まれ、海老蔵鳴神上人、粂寺(くめでら)弾正、不動明王、早雲王子、安倍清行の主要5役を演じている。原作を今井豊茂が新たに脚本化、奈河彰輔が演出、藤間勘十郎が振付・演出。
早雲王子の皇位を狙う陰謀を縦線に、それを阻止しようとする文屋豊秀(段治郎)の家臣、弾正の活躍(「毛抜」)、王子に陥れられ、怒りのため竜神を封じ込めた鳴神上人が、雲の絶間姫(芝雀)にろう落されるまで(「鳴神」)などが描かれる。
  〜中略〜
浅草公会堂は「新春浅草歌舞伎」。昼の最初が「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)・将監閑居(しょうげんかんきょ)」。勘太郎の又平と亀治郎のおとくが夫婦愛を表現した。愛之助雅楽之助(うたのすけ)がいい。次が「弁天小僧」。七之助の弁天は女から男への変わり目が鮮やかで、獅童の南郷もしっかりと受ける。愛之助の駄(だ)右衛(え)門(もん)に大きさが感じられた。
  〜後略〜
毎日新聞 2008年1月16日 東京夕刊

写真は『雷神不動北山櫻』より鳴神上人海老蔵)、絶間姫(芝雀)と『金閣寺』より東吉(勘太郎)、鬼藤太(いてう)、大膳(獅童)、雪姫(亀治郎)、軍平(男女蔵)。