いやあ…



本日付で更新された歌舞伎美人の“富樫佳織の感客道”。
お客様が町田康さんということで何気なく読んでみたのだけど、物凄く納得いくことが書かれていて。

町田「歌舞伎は、現代の意味で言う“演劇鑑賞”というよりも音楽を楽しむ感覚に近いのかもしれませんね」
    〜中略〜
町田「人がなぜ新作を観たがるかと言うと、次の展開を知りたいからなんですよね。サスペンス劇や推理小説は、犯人が誰なのかを知りたいがためにみんな最後まで観たり読んだりする。それはひとつのストーリーの型なんですよ」
富樫「音楽はそうではないですもんね」
町田「歌舞伎を何度も観るというのもそうですよね。みんな結末も知ってるし、全場面の流れも知っていて観る。普通の考え方だと『先の分かっているものを観てなぜ面白いのか?』ということになりますけど、それは面白いんじゃなくて“気持ちがいい”んですよ」
富樫「なるほど」
町田「“面白い”というのは筋が分かってしまったらある意味終わりなのですが、“気持ちがいい”というのはそうじゃないんです。音楽だったら曲の展開を知っていて『あ、ここで、あのカッコええギターソロがくるぞ!…くるぞ、くるぞ、きたー!』っていうのが気持ちいいんですよね」
富樫「思ったことがその通りになるのがね、気持ちいいんですよね」
町田「だから音楽も歌舞伎も、一回だけ観るよりは二回観たほうがいいし、二回よりは三回観たほうがいいんだなと思いました」
富樫「何度か観て展開を覚えてしまえば外せない場面も分かってきますしね」
    〜中略〜
町田「歌舞伎の面白さは、理屈抜きで観て面白いところなんだと思います。どうしたこうしたって話じゃなくて、衣裳を観たり俳優を観たり、ただ単に観て楽しいというのも大きいと思います。それは音楽にもあります」
歌舞伎が400年間、観客を魅了してきた醍醐味のひとつは、この“気持ちよさ”。難しいことを考えなくても“気持ちいい”という感覚に身をゆだねれば、初めてでも何十回も観ていても楽しみは変わらない。



私の中には未だに、歌舞伎を観ることは好きだけれど、現代劇を観るという引き出しは無いという感覚があるんですね。*1もっと言うと“演劇”を観るという引き出しが無い、という。
そんな私が歌舞伎は抵抗無く観られる…どころかハマってると(笑)。それがすごく自分で不思議で。どうして歌舞伎は別格なんだろう、というのをずっと考えていて。
あと、何度も同じ演目を観ても面白いというのはどうしてなんだろう、と。
それがこのインタビューを見て、物凄く腑に落ちたという。


好きな音楽を繰り返し聴く、という行為と、同じ演目を何度も観るということは同じ感覚から発生している、ということですね。勿論全ての人に当てはまる訳ではないと思いますけど、少なくとも私にはぴったり当てはまると言えるかと。
同じ人のLIVEに通い詰めたのと同じですわね…。いやまぁこれは基本的にミーハーだとかいうのがあってのことなんですけど(苦笑)。
ガーッと演奏していて、それがピタッとブレイクした瞬間に声掛ける、っていうのをよくやってたんですが、それって大向こうと全く同じ感覚じゃないかと思い当たったり。…なんかもうこれなんて文字通り“今更”だなー。なんで今まで思い当たらなかったんだろう。*2


それからまぁここらへんはうっすら思っていたし、実際に語られている方も目にしたことがありますが。
“様式美”というのが共通かと。特に私は所謂“ビジュアル系”が好きだった訳ですから(笑)。
“記号”と“お約束”の世界というのも本当に似ているかと。


感覚的な話なので、これだけしっかりとしたインタビューが文章に纏められていても分からない人には分からないのでしょうけど。
眠くていつもに増して考えてること纏められませんでしたが、自分の中は非常にすっきりしました(笑)。

*1:現代劇に関しては、“演劇っぽい”台詞回しが苦手だから、というのもあるんですけど。

*2:あと、初めて観る演目でも台詞回しから次に間が入るだろう、というのが感覚的にわかるし、外れることがほとんど無いんですが。これってある程度観慣れている人なら誰でもそうだと思っていたのだけれど、そういう訳でも無いというのが不思議で。でもこれも音楽を聴くという行為から発生して身に付いたものなのかも知れないですねぇ。