2009年2月まとめ



14日  二月大歌舞伎(歌舞伎座
      昼の部:3階12列上手側
       菅原伝授手習鑑
        加茂堤・賀の祝
       京鹿子娘二人道成寺
       人情噺文七元結


22日  二月大歌舞伎(歌舞伎座
      夜の部:3階12列上手側
       蘭平物狂
       勧進帳
       三人吉三巴白浪


《今月のいちばん》
『加茂堤』
次点:『勧進帳


さっくり感想とか覚え書きを。

加茂堤・賀の祝

前回上演時(平成17年9月)は、『賀の祝』のみだったんですね。
『加茂堤』がのどかでユーモラスで、より後の悲劇を際立たせるなと。そして今、筋書を見てびっくり。*1あのアホ公家(三善清行)が松江丈だったとは…。
千代と春がそれぞれ夫の名前にちなんだ柄の着物なのに、八重はなんで全然違う柄なのかな…という疑問があり。*2前回疑問に思った八重が人妻なのに振り袖なのは“歌舞伎らしい嘘”だそうですが。
前回の『賀の祝』では桜丸が腹を切った後、3階中央にいた私の席から丁度前屈みになった某役者さんの着物の中が見えて…背中が凄く中途半端な白塗りで、途中からモロに肌色になってたのが気になって仕方なくなってしまったんですが(苦笑)。今回は横に外れていたのと、そこまで前屈みになっていなかったみたいで見えず。

京鹿子娘二人道成寺

はとバスか何かのツアーだったようで、『賀の祝』の後、ぼちぼちお弁当を食べてらした方がいたものの、これが始まったら6列から10列までの中央がごっそり空席に。お陰様で大変観やすくなったんですが、ふと幕見を見たら立見が2列になるくらい盛況だったので(昼の部は完売状態だったそうですし)ホントに勿体無いなぁと。
かく言う私も、昼食後と体調の悪さが相まって、途中ちょっと寝てしまいました…。

人情噺文七元結

中村座で初めて拝見して以来、この演目のデフォルトは勘三郎丈な訳でして。*3
それに比べるとあっさりした印象。文七もあんまり嫌なヤツじゃなかったなーと(笑)。
角海老手代の團蔵丈が素敵、とか鳶頭の吉右衛門丈が格好いい、とか脇に気が行っていたんじゃ、というハナシはナイショです(笑)。


昼の部観劇当日の軽いハナシはこちら → 音羽屋の - くだま記

蘭平物狂

筋書にあった、福助丈がこの演目初、というのが意外でした。
以前拝見した時にはコタちゃんが繁蔵だったんだよねー、よっちおっきくなったけどまだ小さいなー、とか色々思うところあり(笑)。*4
奥庭への転換がかなり長くて、前回もこんなだったかな?と思ったりもしましたが、意外とダレることもなく。
花道での梯子を使った立ち回りを観て改めて、今回の三津五郎丈が現役の方で最高齢の蘭平役者ということも頷けるなと。*5そして前回上演時に二度拝見しているにも関わらず、蘭平の梯子で一回転というのがあっさりしてるものなのね、と思ってしまった自分にどうかと突っ込み…(泣)。*6
しかし本妻がダンナの恋患いのために似た女を探す、ってかなり荒唐無稽な話だなと改めて思ったり(笑)。

勧進帳

吉右衛門丈お疲れだったのでしょうか…。初日辺りで拝見した方のblogで吉右衛門丈が小さく見えた、というのを見掛けたのが先入観として残っていたのでしょうか。私も出て来られた時に「あれ?」と思い、後までそのまま、という感じ。延年の舞辺りから大きさが感じられてきましたが。
四天王がかなり豪華という印象。特に菊之助丈の駿河次郎が眼福。*7
富樫の衣装、鮮やかな浅黄色だったり、今回の菊五郎丈のように果てしなくねずみ色に近かったり、というのは富樫をおつとめになられる方の好みと言うか型と言うか、家の色、みたいなものがあるんでしょうかね?*8 個人的には弁慶とのコントラストがハッキリする浅黄色の方が好きですね。
あと、写真の印象やビデオなどで何度か繰り返して観ているせいか、私の『勧進帳』のデフォルトがすっかり海老蔵丈のものになっていてですね。あれはあれでドッカンバッタンやり過ぎだとも思うのですけど、どうも今回の『勧進帳』は大人しいと言うか迫力が無いと言うか…山伏問答も盛り上がらないなという印象で。
…とか何だか難癖ばかりという感じですが。実際、拝見していてとにかくイマイチ感が拭えなかったのですけど。
最後、幕外に立つ弁慶が頭を下げた途端、突然胸に込み上げるものが。
今更だけど、やはり吉右衛門丈は凄いと実感。

三人吉三巴白浪

blogで染五郎丈が書かれていた“襟元の楊枝”をチェックしたり。*9
松緑丈の和尚の着物の柄が気になって、双眼鏡と筋書の写真を何度も見比べてみたり。*10
お嬢の着物は裾模様が松竹梅でしたね。
と、色々ビジュアル的にチェックがありつつの。
ちょっと玉三郎丈の台詞回しに疑問を感じました。余りに早口過ぎた気が。大向こうさんの声を挟む間もない流れ具合というのにかなりの違和感。七五調も何も無いという感じで…。勿論何かお考えあってのことだとは思うのですけど、何故あんなに早回しにしちゃったんでしょうね。
コクーン版の福助丈は逆にうたい過ぎだと言われたりしていたようですが、あれが染み付いている(笑)私としては、あの早口が何だか勿体無いような気すらして。あの部分が流れちゃうと、大川端の場というものの見どころって無くなっちゃいますよねぇ。前回拝見した時はあんなこと象無かったはずだけどなぁ…とにかく何故、と疑問が募りました。


夜の部観劇当日のハナシはこちら → 二月大歌舞伎・夜の部 - くだま記

*1:楽近くに行く時に写真入りのを買うので、観劇時には未購入だったのです。

*2:千代は全面に松葉、春は裾に梅模様。八重はたんぽぽと土筆。

*3:と言いながら、当時ほとんど知識が無かったため興味無く、角海老女房が福助丈だったという記憶は全く無い。

*4:しかし親御さんを見ればまだまだこれから、と思いつつも、宜生くんとか玉太郎くんの小ささにちょっとビビる今日この頃(笑)。先月の玉太郎ちゃんの胡蝶、史上最小だったんじゃないでしょうかね。鞨鼓に顔が半分埋もれてる胡蝶なんて初めて観ましたよ〜。と書くと否定的に思われるかも知れませんが、舞台度胸凄いと思うし、玉太郎ちゃんは将来大物になるだろうな、と楽しみにしているのですけど。

*5:でも梯子での立ち回りなら一昨年の團菊祭での『め組』梅玉丈、というのがあるけどね。ある意味あの方が凄かったとも言えるかと。

*6:初回、蘭平の身体が下を向いた状態で延々戻らなかったのでそういうものだと思っていたら、鬘が外れてしまい捕り手総動員で隠しつつ鬘を戻すという作業をしていた、という話を後から聞いたもので。

*7:そして染五郎丈の弁慶はいつだー、というのがあったり…。

*8:以前團菊祭で同じく菊五郎丈が富樫をおつとめになられた時も確かあの色だった気が。

*9:吉の字菱のすぐ横辺りに挿してありました。

*10:最初、“呂”の字だけが見えたので…菊五郎格子の訳無いし、と思ってよくよく見たら“松”に“呂”に5本・4本の線で足して“九”と。初めて知りました、“松緑格子”。