劇評

歌舞伎:九月大歌舞伎(歌舞伎座) 吉右衛門・弁慶と富十郎・富樫、圧巻の攻守問答
昼の最初が、魁春舞鶴橋之助の五郎の「正札附根元草摺」。続いて「賀の祝」。時蔵の桜丸がいい。のれん口を分けての登場から、品と憂いが漂う。段四郎の白太夫に情愛が感じられる。歌昇の梅王、橋之助の松王、芝雀の千代、福助の八重、扇雀の春と周囲もそろう。続いて「豊後道成寺」。大きな動きをするわけでもない雀右衛門清姫が、片肌を脱いだだけで、妄執の蛇と見えるのはさすがだ。
  〜中略〜
続いて「勧進帳」。大きさのある吉右衛門の弁慶とセリフに切れがある富十郎の富樫。攻守きっ抗する問答が圧巻。弁慶の飛び六方を踏んでの花道の入りまで緊密な舞台。福助義経に品がある。
  〜後略〜

写真は『勧進帳』より、弁慶(吉右衛門丈)と富樫(富十郎丈)