劇評

歌舞伎:「東海道四谷怪談」(シアターコクーン) 勘三郎が悲劇性強いお岩みせる
コクーン歌舞伎旗揚げに上演した作品の12年ぶりの本劇場での再演。邦楽を伴奏に用いた前回の上演形式に近い「南番」、洋楽を伴奏にした「北番」の2形式で鶴屋南北作品を上演している。ともに串田和美演出。
勘三郎のお岩、橋之助伊右衛門は共通。勘三郎は信じていた夫、伊右衛門に裏切られたことを知り、悲しみが悔しさに変化して行く様を説得力を持ってみせていく。怖さより、悲劇性の強く感じられるお岩である。
橋之助は瞬時に気持ちの変わる伊右衛門という人間をよく描き出した。母お熊(笹野高史)との甘えを含んだやりとりなどで、大人になりきれない等身大の男性像が鮮烈に浮かび上がる。
「北番」では「南番」でカットされる「三角屋敷」と「小平内」が上演される。お袖、直助、与茂七の愛憎関係が描かれる「三角」があることで、お岩・伊右衛門とお袖・直助の二つの愛の形が見えてくる。勘三郎が活写する直助のお袖への狂おしいまでの愛情に比べれば、お岩への伊右衛門の愛は自己愛の変形でしかない。伴奏の洋楽もよくはまっているが、「三角」では音量を下げてほしい。肝心の瀕死(ひんし)のお袖と2人のやりとりが聞き取り難い。
七之助のお袖は、高家の家来である伊藤にも逆らう強さと、2人の男の愛に悩むはかなさの両面を見せる好演。扇雀の与茂七がさわやかだ。「小平内」では弥十郎の孫兵衛が好演。「夢の場」は遠見の子役を入れた蛍籠を上からつる趣向はおもしろいが、状況は分かりづらい。「南番」の亀蔵、「北番」の笹野。宅悦がそれぞれにおもしろい。24日まで。【小玉祥子

毎日新聞 2006年4月12日 東京夕刊》

写真は『北番』より扇雀(与茂七)・橋之助伊右衛門)・勘三郎(直助)


つー訳で観劇前日に記事が出まして。観劇日朝に読みました。
伊右衛門に関しての解釈が私には非常に興味深くて、実際に拝見している最中、この場面で思い出して
「なーるーほーどー。」
と思いました。


ということも含めて『北番』2回分の感想文…ダレてます上に仕事がそこそこあるんで(以下略)。

《2006.4.15 記》