幸四郎丈インタビュー

松本幸四郎:新三に初挑戦 10月歌舞伎座の夜の部「髪結新三」で
◇イメージ変える役は画期的、おじの演技参考に生活感出す
松本幸四郎が10月歌舞伎座の夜の部で「髪結新三」の新三に初挑戦している。同作品は河竹黙阿弥の傑作のひとつ。白子屋の娘、お熊(高麗蔵)を誘拐し、身代金をせしめようとする髪結いの新三の悪党ぶりを描く。
五代目尾上菊五郎が初演し、六代目菊五郎、十五代目市村羽左衛門、近年では二代目尾上松緑、十七代目中村勘三郎らが得意としてきた。
幸四郎は、ここ数年で「加賀鳶」の道玄、「魚屋宗五郎」の宗五郎など黙阿弥の世話物に次々と挑んできた。その延長線上に今回の挑戦もある。それまでは同じ黙阿弥物の悪党でも河内山、和尚吉三など、もっと大物を演じることが多かった。
「まことの私は小悪党ですから(笑い)。機会を与えられないと役者は演じることができません。イメージを変える役をいただけるのは、画期的なこと。チャンスをもらったら役にかけます」
同じ舞台に立ってはいなくとも、二代目松緑、先代勘三郎の新三は何度も見ている。
「頭の中にしみこんでいる2人のおじの演技を参考にします。そして現行の台本と原本を照らし合わせる。そうすればいろいろな発見が生まれます。庶民の生活感をなるべく出したい。新三が家主長兵衛(弥十郎)にやり込められるところでも、工夫をするつもり。これが私の黙阿弥物のひとつの区切りになるでしょう」。段四郎の弥太五郎源七、門之助の忠七、市蔵の勝奴。
昼の部では「熊谷陣屋」の熊谷直実。当たり役のひとつで、この2月にも前段にあたる「陣門・組討」の熊谷を演じた。筋を通すためにも「続けて演じたかった」と話す。「熊谷が討ったのは、本当は誰なのか、というサスペンス劇でもあるし、息子の小次郎を平敦盛の身替わりに立てた『身替わり劇』でもあります」。芝翫の相模、團十郎義経魁春の藤の方、段四郎の弥陀六の配役だ。26日まで。【小玉祥子

毎日新聞 2006年10月12日 東京夕刊

写真は新三(スチール写真)。


幸四郎丈に限ったことではありませんが、60歳を過ぎてなお初役というのはつくづく凄いことだと思います。
やはりどうにかして観に行くべきでしょうかね…。“行くべき”という以前の問題として、観たいと思うんですが。*1

《2006.10.13 記》

*1:観たところで文中にある“工夫”に気付くとは思えませんが。漫然と観る、もとい、見るだけのワタクシですので。