十二月大歌舞伎・昼の部



先月の昼の部の感想が予約のまま止まっているけれど、まず先に。*1


◆三階十列中央
  配役は◇こちら◇に。


昨日夕方から俄かに体調が悪化、朝も具合が悪く風邪薬とドリンク剤投入して出掛けたものの、薬のお陰か猛烈な眠気…。そのため半分寝てました。自分にがっかり。

八重桐廓噺

この演目、一昨年、同じく十二月の朝一番の狂言として拝見しました。福助丈の八重桐で。席は今回とかなり違いますが。あの時は確か一階の二列目でした。でも物凄く端だったのでオペラグラス使った記憶が(苦笑)。
とか思いながら拝見したのですが。実はあらすじは覚えていたものの、細かいところは忘れていると思ったんです。でも意外と覚えていた…気がします、私にしては。でも今回の型が福助丈の時のものと同じかどうかというのが分からず。これって全然覚えてないってことですよね…。
というのはともかく。出てこられてすぐの菊之助丈になんだか少年のような印象を受けたものの*2芝居が進むにつれて前述の通り意外と内容を覚えていたということもあってか、スムースに話に入っていけました。
松也くんの沢瀉姫は可愛らしかったし(デカかったけど…)、團蔵丈の煙草屋と市蔵丈のお歌に亀蔵丈の十郎がやり込められる場面も面白かったですね。*3
最後、花四天との立ち廻りから二段に上がって決め、という流れも綺麗でした。結構眼福で既に満足感一杯に。

忍夜恋曲者

席が席なので、傾城如月の出からしばらくはほとんど見えず。人の間にちらちらと蝋燭の面灯りと時蔵丈がどうにか見えるというのが残念でした。*4でもあやしげ(怪しげでもあり、妖しげでもあり)な空気は十分に伝わってきました。
本舞台に移ってからは華やか、と言いたいところですが。どちらかのブログにあった気がするのですけれど、やはり衣裳が地味かなと。帰宅してから福助丈の写真集で確認してみたところ、あれは“本式”の衣裳のようですのでこればっかりはどうにも、なんでしょうが、場所が寂れた屋敷、というところの上にあれはちょっと。もう少し華やかでもいいんじゃないでしょうか(例えば『蜘蛛の拍子舞』みたいに)。しかし怪しい雰囲気を増幅させるという点では良いのかも? 歌舞伎らしい“極彩色”に対する“単色の美”ですね(こちらの例は『関の扉』の墨染でしょうか)。髪を纏めていた細い銀糸の束は蜘蛛の糸という意味ですよね。そういう細かいところがわかったのでまぁいいか<何。
蝦蟇がなんだか可愛かったり(笑)、これも立ち廻りが楽しかったりと。屋台崩しと共に後ろの書割(?)も崩れて、*5屋根の上で見得という派手な終わり方でしたが、始まりと同じく最後も残念ながら滝夜叉姫の姿が胸から上が見えず(涙)。平家の赤旗を広げているんだなー、というのは分かりましたが<あれだけだらりとしてればね。
今度この演目がかかったら、頑張って下の席を取った方がいいね(苦笑)。

芝浜革財布

政岡のような女形の大役も素晴らしいですが、こういう下町のオヤジを演じたらもう無敵ですね、菊五郎丈って。間の取り方とか絶妙としか言いようが無い。飲んだくれだけど愛すべき人だから、おかみさんが愛想尽かしたりしないんだろうな、って感じ。
話としてはかなり他愛も無い内容だけれど、それだけにほっとする一幕。仲間が集まって呑んでいる時に、かみさんをけなすんでなく自慢して喧嘩に、ってのがいいじゃないですか。三年頑張ったらあんなに立派な家(店)が持てたというのもね。*6

勢獅子

亀三郎丈に松也くんに松江丈。どこ見ていいのかわからない。更にふと、梅玉丈の踊りって好きなのかも知れない、とか思い始めた上に雀右衛門丈登場で、もう何がなんだか。それなりに各人見せ場がばらけていたので良かったですが、でも主に亀三郎丈と松也くん二人を見ようとしていたので…(苦笑)。
『芝浜』の最後と言い、この演目と言い、獅子舞が出てきたので気分はもう正月、という感じで打ち出されました(笑)。

*1:と言うか今後進むのかという大疑問が。その他スルーしているものは数知れずだし。九月なんかもう記憶の遥か彼方。『籠釣瓶』4回も観たのに…。

*2:先月の『弁天』がまだ私の頭の中に残っていた模様。

*3:嫌いな煙草も吸えば女にもてる、ということで十郎が無理に吸ってやり込められるというくだりを覚えてた自分に驚く。一本、二本という数え歌だったとか、最後くるくる回される〜とかね(最後くるくる、はお約束的ですが)。

*4:しかしな…開演してからしばらくの間、客席の明かりを落とすので席に着けないという演出がこのところ多い気がするので、特に目立つのかも知れないんですが。席に着きそびれた人が三階席の中ほどの入口から入って通路際の口に群がったままというの、どうにかならないんでしょうか。あの人たちがいなければもっと見えるのに、という事がとても多いんですよ。今日もこの演目で二人ほどずーっといらして。一人は男性で背が高いのでそれだけでアウト。もう一人は女性だったのだけれど、あろうことか背伸びはするわ五列目後ろまで出て行くわと。『芝浜』でも同様のことがあり、私の後方にいた人が出て行って注意する始末。係員の方、気を付けて欲しいです(愚痴ってばかりいないで松竹にメールするか…)。

*5:かなり勢い良く後ろの破片が落ちていたのですが、一番奥にいらした方の三味線の竿の頭(?)を危うくかすめそうな位置にほとんど“飛んできた”のにはびっくり。

*6:逆にあれとか「稼ぐに追い付く貧乏無し」って台詞聞いて「ワーキングプアなんて現象が起きている現代って一体何なんだろう。」となんだか悲しく思ったりもしたんだけど…。