劇評

演劇:朧(おぼろ)の森に棲(す)む鬼(新橋演舞場) 悪漢物のだいご味見せた染五郎
市川染五郎劇団☆新感線による新作。染五郎が「リチャード三世」ばりの悪役に挑んだ。中島かずき作、いのうえひでのり演出。
エイアン国とオーエ国が争う戦乱の世の中で、貧しいライ(染五郎)は、森に棲む3人の魔物と契約し、魔力を持つオボロの剣を手に入れる。ライは嘘(うそ)を重ね、オーエ国のシュテン(真木よう子)、エイアン国のシキブ(高田聖子)らを次々とだまし、王位へと上っていく。
エイアン国の将軍を殺したのを手始めに、人を裏切り、殺(あや)め、のし上がるライ。染五郎がためらいなしに悪事を行う男を、歯切れ良く、テンポ良く、見せていく。登場する度に身分が上がり、衣服も豪華になり、風格も出てくる。主人公の悪(あ)しき成長が、見るものをわくわくとさせる悪漢物のだいご味がある。場面の転換も筋運びも速く、終幕まで、めりはりのついた飽きの来ない舞台となった。
  〜後略〜
毎日新聞 2007年1月18日 東京夕刊

写真はライ(染五郎)。


歌舞伎じゃないですが歌舞伎カテゴリに…<『朧』のこと取り上げる度に書いてるなコレ。