浜松町かもめ亭・第7回公演



未だ未完成の感想文がありますが(汗)、取り敢えず先にこちらを。
いつもでしたら“丈”という敬称を用いていますが(モブログ時など例外はありますけれど)、今回は落語家さんの敬称がよくわからないので、*1全て“さん”とさせて戴きます。
当日のモブログはこちら → 今日の番組 - くだま記


7月11日、浜松町駅すぐそば、文化放送のビル内12階にあるメディアプラスホールで開かれた落語会に行ってきました。
一度体験してみたいと思っていた“落語”、それがこのような形で実現しようとは…(笑)。


ホールと言っても学校の教室を少し広くしたくらいでしょうかね。せいぜい特別教室くらい? お客さんは200人弱くらいかな…。*2大入り満員、切符は発売後すぐに売り切れたとか。


この日の番組は以下の通り。

子ほめ  立川こはる
笠碁   金原亭馬治
トーク  柳家喬太郎中村福助
厩火事  中村福助
  仲入り
竹の水仙 柳家喬太郎



前座は立川こはるさん。お写真とプロフィールはこちら → http://tatekawaryu.at.infoseek.co.jp/shutuen/koharu.shtml
あらやだなんか人相悪い…(笑)。高座に上がられる時はメガネはしてませんし、*3もっと柔らかい、と言うよりむしろ可愛いって感じでした。
「いたよね〜、こういう体育会系のコ。」
という。高校の時の同級生を思い出したりしてました。そのコは美術部だったんだけど(笑)。というのもあってなんか微笑ましくてニマニマしてしまったり<怪。
語り口もハキハキしていて聞きやすい。まだまだ前座ということなのか、“楷書の落語”という印象だったんですが、どうなのかしら。
ネタは『子ほめ』。あらすじはこちら → 子ほめ(こほめ) 落語: 落語あらすじ事典 千字寄席
噺に入ってから「あー、これってもしかして『子ほめ』ってヤツ?」と思っていたらやはりそうでした。落語の知識が無くても知ってるくらい有名なネタ(題)ですね。しかしあらすじを読んでなんかサゲが違った気が…と思っていたら*4かもめ亭のレポによると、珍しいものだったらしいです。


次は金原亭馬治さん。お写真とプロフィールはこちら → ドメインパーキング
誰かに似ている、とずっと思ってました…。そして未だにわからない。うう気持ち悪いよー(苦笑)。
マクラは鹿芝居。やる1年も前からあれをやろう、と決めてあるのに、何故か直前に歌舞伎でかかってしまう、と。今年2月の『仮名手本忠臣蔵』然り、直後にある大銀座落語祭での『三人吉三』然りと。どちらも知っていたことなので妙にウケましたワタクシ。*5
ネタは『笠碁』。あらすじはこちら → 笠碁(かさご) 落語: 落語あらすじ事典 千字寄席
途中カミカミになってしまったところもありましたが、ご隠居さんふたりの喧嘩するほど仲がいいとかいう空気が良かったですね。サゲがちょっと流れてしまったように感じたんですけど、これってこういう噺だからいいのかな?


続いて喬太郎さんと福助さんの対談。
喬太郎さんが先に出てこられて前振り。舞台上に左右に振り分けたように座布団が置いてあるので、まずそれが座りにくい…と苦笑。
出てこられた福助さんは、緑のお着物に役者さんらしく袴を着けたいでたち。かもめ亭のレポの写真では妙にくすんでいて灰色っぽく見えてしまってますが。これくらいの色だったと思うんだけどな〜 → 鉄色 てついろ #005243の色見本とカラーコード - 原色大辞典*6
で。トークの内容は…いつも通り滅茶苦茶飛びまくりでした(笑)。喬太郎さんが話を振って一言答えたと思ったら「話は変わるんですけどね。」って鬼ですよ福助さん(笑)。その昔、とある漫画家さんのイラスト集の中のコネタ漫画で、違う作品のキャラクターが競演というのの中に“腹の探り合いで冷たい戦争”っていうオチの話があったんだけど、なんかそれを思い出してしまいました。別に“冷たい”なんてことは思わなかったんだけどね…“腹の探り合い”ってところが私にとってはポイントだったのかな。探ってるのはどう見ても喬太郎さんだけでしたけど(笑)。腹探られて内臓引きずり出されているにも関わらず、そんなもんお構いナシに走り続ける福助さん、といったところでしょうか(爆)。しかし終わってからご一緒させて戴いた方たちとお話したり、blogあちこち拝見させて戴いたところ、皆さんとにかく噛み合ってなくて…と気にされていたようなんですけど。私にはあの噛み合わなさっぷりはお互いに納得ずくのところがあってのことだったんじゃないかと思えてならなかったですよね。お話しした時にはうまく表現出来なかったんで「そうねー。」とか答えてたんですが<失礼な…。いや確かに喬太郎さんすごい汗かいてましたけどね…。ずーっと困った顔されてたし。最後の方はかなり「タスケテ」って感じの表情になってたし(苦笑)。
で。印象に残った話は

  • 『芝浜』のおかみさんは旦那の運命を操るような感じがして嫌な役だと思っていたのだけれど、落語の中で「お前さんを暗いところにやりたくなかったんだよ。」という台詞がある型があって*7腑に落ちて、芝居にもその台詞を入れた。
  • 「型から入るもんで〜。」とおっしゃって、「ちゃんと紋も入ってますよ。」とお扇子を広げた時に何とも言えない嬉しそうな表情をされていた福助さん(笑)。*8「手拭いじゃなくて和光のハンカチで。」とも。これは大好きな文楽さんに倣ってとのこと。
  • 「落語には型があるんですか?」という質問が福助さんから。喬太郎さんのお答えは、門派によって異なるものもある。他所の形をやりたい時はお願いして教えていただく。他門の者が出来ないものもある、といったお答えでした<曖昧…。
  • 仲の良い落語家さんの話をされていた時に、流れでふいに「三木助死んじまってね…。」としんみり。

もっと沢山お話されたんですが(たっぷり30分はあった)あまりの話の纏まらなさっぷりのせいか、思い出せないですねぇ(泣)。


そして公演の最中だから無理だと思いながらも淡い期待(笑)を抱いていた福助さんの落語が〜。
一度下がられて袴を脱がれて登場。出囃子は『野崎』というヤツだったそうで。文楽さんの出囃子だったそうですが、今月の国立『野崎村』にも引っ掛けてあったのかしら?*9
ネタは『厩火事』。あらすじはこちら → 厩火事(うまやかじ) 落語: 落語あらすじ事典 千字寄席 *10
マクラから本題に入る時に羽織を脱がれたんですが*11この時の仕草と表情が素敵でねぇ…。
しかしまったりと始まった噺も、長屋のおかみさんの台詞が進むにつれ、どんどん白熱。早とちりのおかみさんですからねぇ。「孔子幸四郎の弟子かなんか?」には爆笑。*12その後、孔子の故事の話が続くんですが、脳内ではすっかり孔子幸四郎さんになってましたワタシ(笑)。
声を潰して話していらしたのと、かなり声量も落としていらっしゃたので聞き取り辛いところもあったりしたのですが、あの所謂しゃがれた声すらうっとりして聴いてましたよ私は(苦笑)。
最後に出てきた亭主の声と表情がまた素敵で、終わってからしばらく…いやある意味今でも思い出すとため息出ちゃう、という福助さんの落語は20分ほどで終了<ホントに落語聴いてのか私。


仲入り。
ご一緒させて戴いた歌舞伎も好きだけれど落語も好き、という方が、私たち歌舞伎が好きな3人にひとこと。
福助さん、トーク凄い飛ばしてたねー。」
それに対する私たちの答えは
『ううん。』
「え?」
『あんなもんじゃないよね、いつも。』
ええ、ホントに甘かったんですのよ、暴走されてましたけど(笑)。福助さんが準備のために先に席を立ってからまたしばらく喬太郎さんがお一人でお話されたんですが。「勝手に一人で転がってくトーク」とおっしゃってましたけど、話のぶっ飛びぶりはともかく、いつもは口調はもっと早いし勢いあるし。今回が“転がってく”だったら、いつもは“走り去ってく”くらいの差がありますってば(笑)。*13


残るは柳家喬太郎さん。お写真とプロフィールはこちら → ドメインパーキング
いやはや何が驚いたって、福助さんより3つも年下だったということでしょう。貫禄あって年上だと思い込んでおりました。そりゃトークやりにくかったですわね…。
ネタは『竹の水仙』。あらすじはこちら → http://homepage3.nifty.com/rakugo/kamigata/rakug269.htm*14
どっしりと落ち着いた話しぶりだったんですが、最後の方、お役人と仲立ちのヒトとのやり取りが凄いぶっ飛んでました(笑)。現代のワカモノコトバ使いまくり。「マジムカツク」とかね。なんかオカマ入ってたりもしたなー。
綺麗に締められた人情話だったんで、気持ちよく打ち出されました。


初めて落語を生で聴いて思ったことは、凄く頭を使うものだな、ということ。
歌舞伎だとそれぞれのお役はそれぞれ違う役者さんがお勤めになられて、しかも視覚的に誰は誰、と特に何も考えなくてもわかるようになってますよね。
でも落語は一人の語りで何人もの人を表現していて、それは語り分けられているのでわかるし、役柄が全く違えば語り口ですぐわかるけれど、それでもぼけっとしてるとこんがらがってきちゃうなと。会話の場合なんかは体の向きでもわかるはずなんだけどね。
開演前にちょっと気になる連絡があったりしたので、それに気を取られた瞬間があって話への集中が途切れてしまい、「あれ?」と思うことが何度かあって。
笑うことは体にいい、と言われているけれど、噺を聴く、ということも体に(頭に)いいんだな、と実感した日でした。


既にあちこちでまとめ記事とかあるのでご紹介。
  浜松町かもめ亭 … かもめ亭HP。そのまんまやな(笑)。
  落語の蔵: 第七回 浜松町かもめ亭 大入り満員!! … 落語配信サイトのblog。福助さんの噺も配信してくれないかなぁ<無理だろ。
  http://www.rakupachi.net/blog/2007/07/post_60.html … この日のレポと、文末にこの日のことを書かれているblogの一覧が。ワタシが当日upしたモブログも載っていてびっくりです。ありがとうございました。


福助さんの話題が新聞記事として掲載されました。
こちら → かもめ亭レポート - くだま記(2007.7.18 追記)

*1:真打になったら“師匠”とか“師”で良いみたいだけど、それ以前の方がわからなかったので…。かもめ亭のレポを見ると、前座と二つ目の方は“さん”になってるなぁ。言うなれば下積みさんなんで無いのか、敬称。

*2:横14×12列(いずれも推定)に加えて、左右横のスペースに言ってみれば歌舞伎座の袖席のように1列設えてありましたので。

*3:出番が終わった後、高座返し等のお仕事をされている時には赤いフレームのメガネ着用。

*4:江戸でも上方でもないんだよねー、と。

*5:2月の方はウチで記事にもしたしね。こちら → 評 - くだま記

*6:お使いのモニタの環境等により色味はかなり異なって見えるとというのをご承知おき下さい。私の環境だとこんな感じということで悪しからず。

*7:志ん生さんのものだそう。

*8:お扇子は普段使われているじゃないか、と思ったんですが、親骨が紅く塗られているものだったので、この日のためかどうかはともかく歌舞伎ではまず使われないものだなぁと。

*9:…『野崎村』の最後にこれ使われているそうですね…。漫然と聴いているのでわかりませんでしたよ私。

*10:調べてみたところ過去2回ほど落語話されているようなんですが、2回ともこの『厩火事』だったらしい。ということは以前ラジオでちょっと流れたおかみさん的話っぷりというのは当然これだったんだなと。

*11:ちなみに羽織を脱ぐ理由(?)はこちらに → http://homepage3.nifty.com/rakuharu/haori.htm

*12:このネタってオリジナルなのかなー、と思ったんですが、どうもどなたかが使われることがあったらしい。あらすじ探していて入ってたのがあったんですよ。

*13:しかし後日、某所での落語会でしっかり喬太郎さん、トークでスルーされた相手に「福助か!」と突っ込みを入れてらっしゃったらしい(爆)。タダでは起きませんね。流石。

*14:上方落語となっているので言葉は関西弁だし、話自体の細かいところが違うところもかなりあるんですが(売り付ける代金を百両と言ったのにこちらのあらすじでは二百両、そして実際に売った額が三百両になっている。一番大きな違いはこちらのあらすじだと買い付けに来るのだけれど、この日のネタでは出向いている、というところでしょうか)、他にきちんとあらすじとして引けるようなところが無かったのでこちらを紹介しました。