『憑神』

いい加減ちゃんとカテゴリ作らんとまずいな…というのはともかく。
15日に行ってきました。既に細かいことは忘れちゃったけど(失笑)。


◆昼の部　3階1列上手側


実は本当に個人的な、舞台の本質に全く関係無いところで今回の観劇は「失敗したな…。」と思いました。
というのも原作があるにもかかわらず今回は余計な予備知識はナシにしよう、ということで読まずに行ったのですけど、途中でこう行くだろうと思った流れと全く逆で、物凄く納得行かないというか気持ち悪い結末になってしまい、何と言うか“しこり”みたいなものが残ってしまったんですね。それで今回ばかりは原作読んでから行けば良かった、と後悔めいた思いが残ってしまったと。
主人公の彦四郎は自分の主義を守り通して胸を張ってして死にに行く、という結末だった訳ですが、どこのシーンだか忘れてしまったんですけど、その主義が180度変わったな、と感じた箇所がありまして。世の中に迎合するというようないい加減なものではなく、これからの時代を生きるということを考えて、古い考えに執着せずもっと新しいことに目を向けよう！ と思っているように感じてしまいまして…そういくだろうと思っていたら、真逆だったので「えぇー」と呆気に取られてしまったという。まぁでも死神という命のかかったものを宿替えさせることは出来ない、というのがある訳で、それを考えると納得して死にゆく、という結末が必要で、主義を変えちゃってたらそういう方向には持って行けないだろうし…。
普通は演劇でもテレビドラマでも、結末を知らないまま観始めるというのがほとんどですよね。それで物語が進んでいって最後にどんでん返し、という結末だったとしてもせいぜい「ふーん…。」といった程度の反応だと思うんですが。なんだか今回は本当に何故か「納得行かない…。」という気持ち悪さが残ってしまいまして。あまりに強く思い込んでしまったんですよね、私が。それもまた何故なのか分からないのですが。


と、こんな感想を持ってしまったのですが。
演劇としての内容はとても良かったです。それぞれの役者さん、本当に素敵でした。
橋之助さんは勿論のこと(笑)、母親役の野川由美子さんはチラシの写真がちょっと怖い感じで意地悪なのかな、と思ったらとっても可愛らしい役でしたし。
デビット伊東さんは情けない兄というのがハマりにハマってるし。秋本奈緒美さんの演じるしっかりした（しすぎた？(笑)）妻と好対照のいいコンビ(笑)。
升毅さんの貧乏神のキャラは立ちまくりだし(笑)。
コング桑田さんの疫病神のお人好しな感じは可愛らしさすら感じたし。*1
鈴木杏ちゃんの死神も可愛かったなー。原作と映画では子供だそうですが、最後の方のあの台詞を子供が言うとどんな感じになるんだろう、ということを思ったりもしました。もっとも見た目だけが子供で、歳にしたら何百歳なのでそういう意味での違和感は無いとは思うし、子供が言うことによって恐ろしさが増すということだと思うのだけれど。*2
葛山信吾さん演じる釜次郎は、狂言回しっぽい感じと言ったらいいのかしら。あの役が無かったら話が進まないのでは、と思うのだけれど原作にはほとんど登場場面が無いとか…。*3
福田転球さん演じる小文吾はチラシのきりっとした感じと全く違ったムードメーカーと言うべきキャラクターでしたね。彼がしゃべるとほっとしたり(笑)。
あと、なんと役名が無い、陰山泰さんの蕎麦屋親父がいい味出してましたねー。
橋之助さんのお弟子さんお三方のご活躍も楽しみました。*4
上手と下手に作られた回り舞台も面白かったです。あとシーンによって花道が橋として使われている時に、ちゃんと欄干が付いたのがちょっと面白かったな。横の人は観辛かっただろうけど…。


今更だけど、やっぱり一度原作は読んだ方がいいんだろうなー、私。

憑神 (新潮文庫)

古本屋で探してみるか。

*1:浴衣の柄が芝翫縞というのがツボで(笑)。最初に出てきたシーンで、他の関取衆は帰っちゃったのに何故あの芝翫縞のヒトは帰らないのかしら、と気にしていたらメインの役なんだもん(笑)。あの柄を使ったというのは洒落と言うか、やっぱり橋之助さんあっての、なんですよね？

*2:彦四郎が家に連れ帰ってそのまま居座る、というのはちょっとどうなんだ、という気もしましたが…子供じゃないからね…。あとどうでもいいところでは、鞠がボールに鞠らしい柄を描いたものだったのがちょっとなー、とか思ったり(苦笑)。ある程度しっかり弾まないと演出として成り立たないので、本当の鞠は使えなかったんでしょうけどね。

*3:最後の方の台詞を聞いていて「ああそうそう、蝦夷に行くのよね…」とか思った時には、脳内に『新選組！』の愛之助さんが現れてました(笑)。

*4:橋吾さんは“説明コーナー”(笑)で後の東郷元帥のお役をされてましたよ…ね？