劇評

歌舞伎:小町村芝居正月(国立大劇場) 入り組んだ芝居刈り込み山場
小野小町らが登場する「六歌仙」の世界と惟喬(これたか)、惟仁(これひと)両親王皇位をめぐる争いに題材を取った初世桜田治助作品の219年ぶりの復活上演。国立劇場文芸課補綴(ほてつ)。
惟喬(亀蔵)と惟仁(松也)の両親王皇位を争う機に乗じ、大伴黒主菊五郎)は天下を狙う。深草少将(菊五郎)と小町姫(時蔵)は陰謀阻止に必要な宝剣を探すため、江戸の「けだもの店」に五郎又、おつゆという夫婦者として身を潜めている。ある日、五郎又は新しい女房を連れ帰った。おみき(菊之助)という名前だが、実は以前に命を助けた小女郎狐(こじょろうぎつね)の変じた姿であった。
王朝物語から一転して舞台はけもの肉を扱う店に移り、五郎又(深草少将)を挟んで、おつゆ(小町)とおみき(小女郎狐)の恋の騒動が展開される。おみきは前妻のおつゆを気の毒がり、おっとりとしたおつゆも嫉妬(しっと)しない。3人と大家夫婦(亀蔵、万次郎)のやりとりが楽しい。
  〜後略〜
毎日新聞 2008年1月21日 東京夕刊

写真はおみき(菊之助)、五郎又(菊五郎)、おつゆ(時蔵)。