劇評

歌舞伎:二月大歌舞伎(歌舞伎座) 色気と思慮深さを出した幸四郎
初代松本白鸚(はくおう)の27回忌追善興行で、ゆかりの演目が並んだ。
昼の最初が久々の「小野道風青柳硯(すずり)」。柳に跳びつくカエルを見て道風が悟りを開くという逸話に基づく。梅玉の道風と三津五郎の駄六との相撲仕立ての立ち回りがおもしろい。
続いて「車引」。橋之助の松王丸が存在感を示す。錦之助の桜丸、松緑の梅王丸、歌六の時平。
その次が「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」。吉右衛門の関兵衛がおおらかで古風。ぶっかえって黒主にってからに圧倒的な迫力があり、福助の墨染のあでやかさと錦絵のような対照だ。染五郎の宗貞に品位がある。
最後が「忠臣蔵 祇園一力茶屋」。幸四郎の由良之助が色気と思慮深さを出した。芝雀のおかるに初々しい風情がある。染五郎の平右衛門は一本気さがよく出たが、セリフにはもう少し変化が欲しい。高麗蔵の力弥。
  〜後略〜
毎日新聞 2008年2月6日 東京夕刊

写真は『祇園一力茶屋』より由良之助(幸四郎)、平右衛門(染五郎)、九太夫(錦吾)。