劇評
歌舞伎:六月大歌舞伎(歌舞伎座) 鬼気迫る吉右衛門の花道の出
〜中略〜
夜の最初が「すし屋」。吉右衛門の権太は前半でならず者らしいすごみを出し、手負いとなって心情を明かす後半との差異を際立たせる。最期にはすべてが徒労に終わった悲しみを見せた。芝雀のお里が一途(いちず)。染五郎の弥助は強さある造形。歌六、段四郎、吉之丞が好演。
次が「身替座禅」。仁左衛門の右京の柔らかみある色気と、段四郎の玉の井の夫を思うあまりの滑稽(こっけい)さがみどころ。錦之助の太郎冠者は実直さを出した。
続いて鈴木泉三郎作「生きている小平次」。太九郎(幸四郎)が妻のおちか(福助)の情人、小平次(染五郎)を何度殺しても、小平次は現れる。小平次が亡霊と明らかにした演出(幸四郎)で、夫婦の葛藤(かっとう)は浮き出たが、つきまとう小平次の不気味さは薄れたように思う。
最後が芝雀、錦之助、歌昇の「三人形」。奴の歌昇の動きが鮮やか。27日まで。【小玉祥子】
毎日新聞 2008年6月18日 東京夕刊
写真は『新薄雪物語』より伊賀守(吉右衛門)、梅の方(芝翫)、兵衛(幸四郎)。
そーいえば夜は『身替座禅』もあったんだっけ…と<何故かすっかりこれだけ忘れてました…。
新派公演の劇評もあり。