劇評

歌舞伎:「江戸宵闇妖鉤爪…」(国立劇場)/「法界坊」(平成中村座
染五郎幸四郎の対決が見せ場−−「江戸宵闇妖鉤爪−明智小五郎と人間豹」
◇法界坊の不気味さ出した勘三郎−−「法界坊」



国立劇場平成中村座で試みに満ちた公演が行われている。
「江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)」は、岩豪友樹子が江戸川乱歩作「人間豹(ひょう)」の時代設定を幕末に置き換えて脚本化し、九代琴松(幸四郎)が演出している。
御家人の神谷芳之助(染五郎)は町娘のお甲(春猿)、踊り子のお蘭(春猿)という恋人2人を次々と半人半獣の人間豹、恩田乱学(染五郎)に殺される。恩田を追う同心の明智小五郎幸四郎)の妻で、殺された2人にうり二つのお文(春猿)にも魔手は迫った。
染五郎が優男の神谷と殺人鬼の恩田の2役に変化をつけ、大だこを使っての宙乗りも披露する。「浅茅が原」など、幸四郎明智との対決が見せ場。春猿が3役をつとめ、お文に世話女房の味わいがある。鐵之助が怪しい雰囲気を出し、高麗蔵が蛇娘にけだるい色気を見せた。26日まで。
   ☆  ☆
「法界坊」(串田和美演出)では、破戒僧の法界坊(勘三郎)が金と女を求めて行う悪事の数々が描かれる。
最初はこっけいに見えた法界坊は、物語が進むに連れ、冷酷な本性を現し、いとも簡単に人を殺し出す。勘三郎が法界坊の不気味さを出した。最後の「双面」では姿を何度も変えての立ち回りも披露する。
橋之助の甚三郎がすっきりとしている。扇雀のお組、弥十郎の永楽屋権左衛門、勘太郎の要助、七之助の野分姫の配役。25日まで。【小玉祥子
毎日新聞 2008年11月20日 東京夕刊