劇評

歌舞伎:吉例顔見世大歌舞伎(歌舞伎座) あでやかに力強い時蔵の八重桐
  〜中略〜
夜の最初は「寺子屋」。源蔵夫婦を責め立てる前半の強さと、後半の、子供を犠牲にした父親としての嘆き。仁左衛門が松王丸の変化を見せた。梅玉の源蔵がきっぱりとしていい。段四郎の玄蕃、魁春の戸浪、藤十郎の千代、孝太郎の園生の前とそろう。
続いて、菊五郎静御前と知盛の霊による「船弁慶」。静御前が美しく切ない。富十郎義経が音吐朗々としてさわやかで、芝翫の舟長が舞台を締める。弁慶は左団次。
最後が三代目時蔵の五十回忌追善となる「嫗山姥(こもちやまんば)」。時蔵があでやかに、また力強く八重桐を見せる好舞台。梅玉の時行がいい風情で、歌昇のお歌が軽妙だ。梅枝の澤瀉姫(おもだかひめ)に品がある。孝太郎の白菊、錦之助の太田十郎。25日まで。【小玉祥子
毎日新聞 2008年11月19日 東京夕刊