劇評

歌舞伎:五月大歌舞伎(新橋演舞場) 久六の変化巧みに見せる吉右衛門
恒例の吉右衛門中心の歌舞伎公演。
昼は「金閣寺」から。不気味さ、気短さ、色気を時々に見せる吉右衛門の大膳が魅力的。芝雀の雪姫は大人の色香を漂わせ、夫を守ろうとする強さもある。人形ぶりにはもう少し軽やかさが出ればと思う。染五郎の東吉がさわやかないい出来。福助の直信、錦之助の鬼藤太、歌六の正清、吉之丞の慶寿院とそろう。
「心猿」「近江のお兼」は福助。サルからお兼へと変わる。きびきびとした愛きょうたっぷりのお兼で、さらしの扱いが美しい。
「らくだ」は岡鬼太郎作。気の弱い久六が酔って変化する姿を、吉右衛門が巧みに見せる。半次は歌昇。威勢の良かった男が相手の酒乱ぶりにたじたじとなっていくくだりがうまい。段四郎歌六の家主夫婦がおもしろく、由次郎のらくだがユーモラスだ。
  〜後略〜
毎日新聞 2009年5月21日 東京夕刊

写真は『らくだ』から久六(吉右衛門)、半次(歌昇)。