劇評

歌舞伎:石川五右衛門新橋演舞場
◇見せ場次々、海老蔵の魅力存分に

安土桃山時代の大盗賊を主人公にした新作歌舞伎。樹林伸の作、川崎哲男と松岡亮の脚本、奈河彰輔の監修、藤間勘十郎の振り付け・演出。
伊賀で忍術を会得した五右衛門(海老蔵)は、聚楽第(じゅらくだい)に忍び入ってお茶々(七之助)と恋仲になる。そして豊臣秀吉團十郎)を呼び出し、南禅寺で対決する。
南禅寺山門」で五右衛門が見えをしての「絶景かな」や、宙乗りで葛籠(つづら)から姿を現す「葛籠抜け」など、既存の歌舞伎の「五右衛門物」でおなじみの名場面も登場する。


毎日新聞 2009年8月19日 東京夕刊

写真は『南禅寺山門の場』より五右衛門(海老蔵)。


で、ついでにちょこっと感想と言うか覚え書きと言うか…単に与太話ですね。つれづれに。
以下ネタバレアリ、注意。


この記事に載っていた写真の場、初日前日の公開稽古の報道で何枚か目にしたのですけど。何で見たのか定かでない、もしかしたら気のせいかしら?という気もしているのですが、これより前に何かで見た時には*1衣裳の下は素肌ではなく、素網*2を着ていた気が…。その代わり(?)、下帯がこんなに出てなかった気もして。
で、本番で観ていてふと
「今月も下帯出してるのか…(笑)。」
とか思ったワタクシ。
と言うのも先月『夏祭』の団七で、三婦内、長町裏と下帯出し過ぎなんじゃ?と思ったからで。
まぁ長町裏は途中から上を脱いでしまうので(後でまた着ますけど)、出し過ぎ、というのもちょっと違うけれど。それにしてもまず着物の間から見える下帯が、勘三郎丈の団七の記憶と何か違う気がして。
舞台、特に花道が客席とほとんど同じ高さのコクーンと違って、歌舞伎座は1階席だとほぼ見上げる形になるので視点も変わってくる訳で。コクーンで平場花横、歌舞伎座でも1回花横で拝見したのでほぼ同位置から観たことになるのですが、歌舞伎座の方がより下半身に目がいくような高さであるため、余計に印象に残ったのかな…と思っていたのですけど。
ちょっと勘三郎丈の団七の写真が手元に出せない(見付からない)ので、webでさくっと検索してみたんですが。ほとんど同じ写真しか出ないので一概に比較は出来ませんけど。
やっぱり先月の海老蔵丈の団七の下帯、長かったような。なーんかべらべらし過ぎてて、格好良く見えなかったんですよね…。
で、今月も南禅寺の見得で出てるな−、と。赤旗白旗の違いはありますけど(笑)。そしてやっぱりちょっと出過ぎなのでは無いかと。
うーん、やっぱり身体が細い分、下帯の幅との比率で余計に出てるように見えるのかしら。
更にどうも素肌にビロードのこの姿、写真で見ると「ガウン?」とか思っちゃうワタクシ<台無し。実際に生で拝見していた時は、そんな馬鹿なこと考える隙なんてありませんでしたけどね。*3


ちなみに七之助くんについては
「今月も夜這いされてるのか…。」
と思ってしまいました。重ね重ね申し訳ないやら情け無いやら。*4 *5


閑話休題
伊賀の里を出るための、霧隠才蔵と最後の闘いの場面。
激しい立ち回りの中、少しの間ゆっくりとした動きで見せるところが本当に美しかった。
ふわふわと降ってくる雪の速度と、海老蔵丈、右近丈の動き、それにツケの音がぴったりと合っていて。*6よく照明を使ってストロボ効果でストップモーションに見せることがあるけど、あれを生身で見せられた、って感じ。
ちょっと震えがきましたね、あれは。


あと…歌舞伎のお約束てんこ盛りってことで。
人形振り、女形の踊り、立役の踊り、連舞、引き抜き、早変わり、六法、大薩摩、宙乗り、葛篭抜け、本火の面明り、差金で飛ぶ鳥、立ち回り、大ゼリのセリ上がり、すっぽんからの出入り、振り落とし…もっと一杯使われてましたよね、歌舞伎の代表的な手法。ざっと思い出してもこれだけのことを、一つの演目でやってるってあんまり無いんじゃないかと。
思い出したら書き足していこうかな(笑)。

*1:テレビ番組?

*2:と言うのだそうです。よく忍者とかが着てますよねー。黒い紐のようなもので編まれた長袖(?)のシャツ様のもの。網鎖帷子を着ているということを示すものだそうです。

*3:そしてこの場では足が白塗りでなく白タイツだったのにかなりがっかりしたんですが。黒い衣裳に白粉が付いてしまうとまずいので、あのような形になったんでしょうね。致し方なし。

*4:そう言えば三幕最初のシーンで所謂キスシーン的な仕草が入ってましたが。歌舞伎ではあんまり使われない形だよね、と思ったんですけど。普通(?)ならせいぜい男の腰の辺りに女が両手を置いて顔が来る形(上手く説明出来ない…)に持ってくよね。

*5:そして「勘太郎くんは二部も三部も病人の看病か。」と思った納涼。『豊志賀の死』はハッキリそういうお役で、『お国と五平』は会話の中で言ってたよね(更に先月は負わされたり自分でやったり、怪我人だったなぁ、とか。

*6:ここのツケってちょっと今まで聞いたことが無い間合いだった気がする。