劇評

歌舞伎:寿 初春大歌舞伎(歌舞伎座) 豊潤な味わいがある芝翫らの「車引」
建て替え年に入った現歌舞伎座の年初を飾る公演。
昼は橋之助の五郎、染五郎の十郎、福助静御前による舞踊「娘七種(ななくさ)」から。それぞれが役に似合った。
続いて「石切梶原」。幸四郎の梶原の心理描写が細かく、魁春の梢と東蔵の六郎太夫が父娘の情愛を感じさせた。左団次の大庭に格が、歌昇の俣野に敵役らしさが出た。
勧進帳」は團十郎の剛の弁慶と梅玉の知の富樫の問答に見応えがある。勘三郎義経は気品を見せた。
最後が「松浦の太鼓」。松浦侯は吉良邸の隣屋敷で、赤穂浪士の討ち入りを待ち望む。その童子と賢者の入り交じったような一喜一憂を吉右衛門が活写。梅玉の大高源吾、歌六の其角、芝雀のお縫と周囲もよく、近習も息がそろう。
  〜後略〜
毎日新聞 2010年1月18日 東京夕刊

写真は『車引』より桜丸(芝翫)、松王丸(幸四郎)、梅王丸(吉右衛門)、時平(富十郎)。


下の記事と同時に掲載されていたものです。
モノクロの小さい写真ですが、本当に今回の『車引』の絵は素晴らしいですね…。