劇評

演劇:わが魂は輝く水なり(シアターコクーン) 圧倒される清水の詩的言語の厚み
副題に「源平北越流誌」とある通り、源平合戦の時代に題材を取っているが、単なる歴史劇ではなく、集団や戦いが持つ狂気など現代の問題に鋭く迫る作品だ。1980年に清水邦夫が発表した戯曲を、蜷川幸雄が初演出。
平家の名老将・斎藤実盛野村萬斎)は、木曽義仲の軍と合戦を続ける。今は敵味方だけれど、実盛はかつて幼い義仲の命を救い、木曽山中の中原一族に預けた。実盛の長男・五郎(尾上菊之助)は、同世代の義仲、巴(秋山菜津子)らと親しく、彼らの軍に身を投じた。だが、五郎は謎の死を遂げ、今は亡霊となって、実盛の傍らにいる。
義仲軍に何があったのか。「まぶしいほど輝きに満ちた若者たち」による「森の国」の実体が明らかになってくる。義仲は心を病み、巴が代わりを務めたが、冷酷なはかりごとを重ねた。60年代から70年代の「政治の季節」、とりわけ連合赤軍の事件を思い浮かべる世代も多いだろう。けれど、この作品はそこだけに限定されていない。
  〜中略〜
毎日新聞 2008年5月22日 東京夕刊

写真は実盛(野村萬斎)と五郎(尾上菊之助)。


一昨日24日、マチネ拝見してきました。
以前ちょっと書いたように、衝動買いのコクーンシートにて。*1
一昨年の『四谷怪談』の時に「全然見えないー!」と思ってるうちに終わった、という記憶があったので覚悟していたのですけど、なんだか拍子抜けするくらい良く見えました。それでも勿論、舞台の上手側半分は見えませんでしたが。*2
客席の前半分に椅子があるのを不自然に思う自分をおかしいと思いつつ(苦笑)、通路を駆け抜ける菊ちゃんの愛らしさに心が洗われる思いでした(笑)。
で…率直に言っちゃうと、芝居自体の内容については自分の中に何も残らなかったんですよね…。
上に挙げた劇評を始め、あちこちで見掛けたような連合赤軍を連想させるような面もありましたが。とは言っても勿論連合赤軍の事件が起きた時代には生まれていたものの、どんなものだったのかまでは詳しくは知りませんので、そういう面から観ることは出来ず。
他にも「これが主題?」というようなポイントはいくつかあったのですけど、まさに“水のように”視点・論点が移ろっていった、という印象。
前評判で色々と難しいことを目にして、余計なことを考え過ぎていたのが敗因なのかも。
“詩的言語の厚み”というのも確かに感じられたけれど、普段歌舞伎の台詞を耳にしている身としてなのか今ひとつ物足りず。「ここはこの言葉の方がいいんじゃないか?」と思うような言い回しとかもあったりして…。*3
ただ、私個人としては最近色々と心が重くなるようなことが続いていて、前評判通りの重い芝居だったら辛いな…と腰が引けまくっていたりもしていたので、そういうものでなかったというのはとても助かりました。途中、端々にふっと笑えるところがあったりもしたし。*4
個々の役者さんに心奪われる場面が何度もあったし…やはり私のモチベーションの低さが“残るもの”を見付け出せなかったということですか。
とにかく萬斎さんの全てが素晴らしかったし、前述のように菊ちゃんは可愛らしかったし(笑)。*5亀三郎さんは思いっきり惚れ直しました(笑)。そもそもこの公演は亀三郎さんお目当てだったんですが、あんなに活躍されるとは思わず。あれを観逃していたら後悔するところでしたよー。*6
亀三郎さんのblogによりますと、国営放送での放送があるということなので、BSではなく地上波での放送を祈りつつ、詳細発表を待ちたいと思います。*7


初日直前の新聞記事の魚拓を取ったまま放置していたので以下に載せておきます。

こちら↓は21日付け。

こちら↓は22日付け。
  菊之助、舞台『わが魂は輝く水なり』でさらなる高みへ | ORICON NEWS


*1:BR一桁台。

*2:四谷怪談』の時には隣にバカップルがいて、特に男の方が大馬鹿で手すりにべったりもたれかかって観てたんだよね…。まぁそれとは別にもっと舞台真ん中の奥の方が見えなかったという記憶があったのだけど。しかしもう2年も前のことを愚痴るくらいなら一言見えないと言ったら良かったんだけど。いつもそういうヤツに注意しようと思うけど、何と言ったら一番効果的なのか考えてるうちに終わっちゃうのよね(失笑)。今まで、注意されて逆ギレしたヤツを何度も見てるんで、正直色んな意味で怖いっていうのもあり…。

*3:例えば“みんな”という言葉が何度か出てきて、それに全てが当てはまる訳では無いけれど、“みな”という方が流れとしては綺麗なんじゃないか、と思うところがあったり。こういうことは歌舞伎にもあったりしますけど…。

*4:そういうところとのギャップがまた堪らなかったりもするのですけど…。

*5:しかしカーテンコールで「ひゃあv」と思った一瞬があったのだけれど、今となってはそれがどんなことだったのか全然思い出せず…。菊ちゃんは私の“萌え”パーソンにはならないのね、と再確認(笑)。

*6:菊ちゃんより台詞多かったんじゃないかと思うんですが。

*7:コクーンだし、放送されるとしたらいつも通りWOWOWだと思ってたんですけどね。“文芸作品”というような位置付けからなんでしょうか、NHKでの放送というのは。